第255・256回西山記念技術講座
「製鉄所における資源循環と廃熱利用」
(申込締切:2025年4月25日)
【講座の視点】
鉄鉱石資源の劣質化は、最近の中国の鉄鋼生産量増加の停滞により、数年前の予想よりは鈍化しているが継続的に進行している。SiO2やAl2O3といった脈石成分だけでなく、鋼材品質に悪影響を与えるP濃度の増加にも対応していく必要がある。これらは製造コスト増につながるだけでなく、副産物であるスラグやダストの発生量増加も引き起こす。持続可能な開発目標(SDGs)を考えると、これらの有効利用技術を次世代に向けてアップグレードする必要がある。また、製鉄所では廃熱利用が非常に高効率に行われているが、さらなる利用もエネルギーの有効利用の観点から求められている。そこで、本講座では鉄鉱石資源の現状、不純物や廃熱の回収・利用技術の現状について整理し、今後の資源動向に対応するリサイクル技術について考える。
日時・場所: |
第255回(大阪):2025年5月23日(金)9:30~16:40 受付時間:9:30~15:50 第256回(東京):2025年6月4日(水)9:30~16:40 受付時間:9:30~15:50 |
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プログラム: | |
参加申込み: 【3月初旬開始予定】 |
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参加費 (税込み、テキスト付): |
会員8,000円、一般15,000円、学生会員1,000円、学生一般2,000円 注)会員割引は個人の会員のみ有効です。協賛団体の個人会員、学生会員も含みます。 *非会員でご参加の方で希望される方には、下記会員資格を進呈します。(入会方法は、開催後、別途ご案内いたします。) ★テキストは、講座終了後残部がある場合、鉄鋼協会会員価格、一般価格で販売いたします。 |
(一社)日本鉄鋼協会 育成グループ
E-mail:educact@isij.or.jp
講演題目及び講演者、司会者
9:50-10:00 | 趣旨説明 |
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司会者:村上 太一(東北大学) | |
10:00-10:50 | 1) 「鉄鉱石資源の変遷と今後の展望」 日本製鉄(株) 原料事業企画部 資源調査室長 柏瀬 陽一 |
10:50-11:40 | 2) 「鉱石からのリンの分離技術」 日本製鉄(株) 技術開発本部 プロセス研究所 製銑研究部 主幹研究員 石山 理 |
13:00-13:50 | 3) 「鉄鋼スラグから鉄、リン回収・利用技術とその可能性」 JFEスチール(株) スチール研究所 製鋼研究部 主査研究員 中瀬 憲治 |
司会者:田中 克廣(神戸製鋼所) | |
13:50-14:40 | 4) 「鉄鋼スラグ製品の適用拡大への取り組み」 日本製鉄(株) スラグ事業・資源化推進部 スラグ営業室部長代理 赤司 有三 |
15:00-15:50 | 5) 「電炉ダストからの亜鉛回収の現状とその技術」 三井金属鉱業(株) 金属事業本部 技術統括部 部長 中山 恵造 |
15:50-16:40 | 6) 「製鉄所のエネルギー利用と排熱回収技術」 日本製鉄(株) 技術開発本部 プロセス研究所 プロセス技術部 部長 田中 剛 |
講演内容
鉄鉱石は、古代から現在に至るまで、文明の基盤として重要な役割を果たしてきた資源である。産業革命以降、急速な需要の拡大を見せてきたが、その供給状況と品位には大きな変化が見られる。特に、これまで開発の中心であった高品位鉱石は減少し、低品位鉱石への依存が進むなど、鉄鉱石の劣質化が鉄鋼産業にもたらす影響は大きくなっている。本講演では、利用鉄鉱石の変遷を概観し、現在の世界各地における主要な鉱床とその特徴について、成り立ちを含め説明する。また、主要鉱床における鉱山の操業状況及び開発計画を紹介するとともに、それらの状況をもとに、鉄鉱石資源の未来の展望について説明する。
我が国が使用する鉄鉱石の中でも近距離ソースとなる豪州の鉱床では、近い将来に鉄分の低下と脈石成分の上昇に加えて鋼材特性を劣化させるリンの上昇が予測されており、脱リン工程である製鋼での投入エネルギーやCO2排出量の増大から、高級鋼製造の競争力低下に至ることが懸念されている。
このような背景を基に本講座では、鉄鉱石からのリンの分離に関する技術動向及び最新研究を取り上げ、資源化再生を見据えた脱リンプロセス構築への展開について紹介する。
3)鉄鋼スラグから鉄、リン回収・利用技術とその可能性
中瀬 憲治
予備処理脱リンないし脱炭処理後の製鋼スラグはリンを含み、その量は日本が輸入するリン鉱石に含まれるリンの量に匹敵するとされる。すなわち、枯渇が予想され、価格が高騰しているリン資源に代わり、日本の重要なリン源となるポテンシャルを秘めている。
本講演では、高温還元による製鋼スラグ中鉄およびリンの還元挙動について、熱力学検討、ラボるつぼ実験による原理確認、数十kg~数t規模のキルン模擬実験の結果を紹介する。
また、高温還元で得られる高リン溶鉄からのリン濃縮処理、還元後の鉄およびリン濃度の低下したスラグの骨材化、リン濃縮処理で得られる高リン濃度スラグのリン資源化技術の開発状況についても紹介する。
鉄鋼スラグは、鉱石から金属を還元・精錬する際に生成する副産物であり、セメント原料や道路用材等として有効利用されているが、近年では、環境保全や国土保全への機能性材料として注目され、開発・製品化が進み、事業への活用が広がっている。
本講演では、地球温暖化対策に寄与する製品として、高炉セメントや、自然エネルギー事業やブルーカーボンへ活用されている製品を紹介する。また、国土強靭化対策に寄与する製品として、鉄道法面補強やため池補強、港湾設備の耐震補強へ活用されている製品を紹介する。
鉄スクラップを電炉で処理して鉄鋼製品に再生する際に発生する電炉ダストには鋼材のメッキに使用された亜鉛が揮発・濃縮しており亜鉛資源の貴重な回収経路となっている。国内では各所でWealts法やMF炉(三井式半熔鉱炉)などを使った電炉ダストからの粗酸化亜鉛の回収事業が行われている。回収された粗酸化亜鉛は国内の亜鉛製錬所で亜鉛地金に再生されて非鉄金属資源の循環利用に寄与している。
本講演では国内の亜鉛資源の流れと電炉ダストからの各種亜鉛回収方法について概観し、その中でMFプロセスの技術と役割について紹介する。
2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて鉄鋼業では革新的な技術開発が進められている。高炉一貫製鉄所では石炭を起点に高炉ガス、コークス炉ガス等の副生ガスを製鉄所内で活用し、多くの排熱回収技術を適用して全体のエネルギー効率を高めてきた。カーボンニュートラルへの取り組みで製鉄所のエネルギー構造が大きく変化するなか、今後も未利用排熱の活用、排熱回収技術の高度化が求められる。
本講演では、製鉄所のエネルギー利用を踏まえて各工程の未利用排熱に注目し、中低温域の排熱回収技術の動向やCCS技術とのマッチングについて紹介する。
会場案内
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CIVI研修センター新大阪東 7階E705会議室
(大阪市東淀川区東中島1-19-4 LUCID SQUARE SHIN-OSAKA)
JR:「新大阪駅」駅下車 東口から50m
地下鉄:御堂筋線「新大阪駅」駅から徒歩5分
http://www.civi-c.co.jp/access.html
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鉄鋼会館 会議室
(東京都中央区日本橋茅場町3-2-10)
JR:「東京駅」八重洲口より徒歩約15分
地下鉄:東西線「茅場町駅」12番出口より徒歩約5分
日比谷線「茅場町駅」1番出口より徒歩約5分、「八丁堀駅」A5番出口より徒歩約5分
https://www.tekko-kaikan.co.jp/publics/index/4/
※講座案内のチラシはこちらからダウンロード出来ます。