日本金属学会・日本鉄鋼協会東海支部
本多記念および湯川記念特別合同講演会のご案内

 2024年度支部本多記念特別講演会および湯川記念特別講演会を合同で以下の通り実施する運びとなりました。本年度は、昨年度日本鉄鋼協会の最高位賞である西山賞を受賞された津﨑兼彰先生(九州大学名誉教授/物質・材料研究機構フェロー)と本年度日本金属学会の最高位賞である日本金属学会賞を受賞された堀田善治先生(九州大学名誉教授/九州工業大学特任教授/熊本大学特任教授/佐賀大学特命教授))をお招きして、構造金属材料研究の歴史と今後の課題について、高所に立ったご講演をいただきます。それぞれの学協会を第一人者として牽引されてこられた両先生のお話をお伺いできる絶好の機会です。皆様の奮ってのご参加をお待ちしております。

東海支部長 戸髙 義一

日時: 2024年12月19日(木)14:10~17:00(17:15~研究交流会)
場所: 名古屋大学ES総合館ESホール
主催: 公益社団法人日本金属学会東海支部、一般社団法人日本鉄鋼協会東海支部
共催: 公益財団法人本多記念会
参加費: 講演会参加費:無料
研究交流会費:無料
参加申し込み: 以下のFormsのリンクにてお申し込みください。

参加申込フォーム

※もし利用できない場合は、支部に直接メール(tokai@numse.nagoya-u.ac.jp)にてお申し込みください。その際、表題を「本多湯川申込み」とし、本文に「お名前、ご所属、連絡先(e-mail)、研究交流会参加有無」の明記をお願い致します。

プログラム:

14:10-14:15 支部長挨拶
司会:足立吉隆(名古屋大学)
14:15-15:30 本多記念講演
津﨑兼彰先生 「鉄鋼におけるマルテンサイト変態研究:温故知新」
15:30-15:45 休憩
司会:尾村直紀(産業技術総合研究所)
15:45-17:00 湯川記念講演
堀田善治先生 「巨大ひずみ加工による微細組織制御と高性能化」
17:15-19:00 研究交流会@名古屋大学内シェジロー
津崎先生の写真

【本多記念特別講演】鉄鋼におけるマルテンサイト変態研究:温故知新
Research on Martensitic Transformation in Steel: Past and Present
物質・材料研究機構/九州大学 津﨑 兼彰

第1回ICOMATが1976年5月に神戸で開催された[1]。私はその年の4月に京都大学金属加工学科の田村今男先生と牧正志先生の研究室に配属となり、卒研として鉄鋼のラスマルテンサイトの組織構成に関する研究を行った。以来48年間、「鉄鋼・マルテンサイト変態・材料強度」を背骨として研究を続けてきた。本講演では各位の議論の用に供するために、1970年代中頃から2000年頃までの20世紀末において注目された研究課題のいくつかを振り返り、1)当時の議論のポイントは何だったのか、2)残された未解決課題は何か、3)今後の鉄鋼マルテンサイト研究に求められるものは何かについての私見を述べる。
[1] 清水謙一:資料「ICOMATの開催経緯とマルテンサイト変態研究の進展」,まてりあ 42(2003)141.

堀田先生の写真

【湯川記念特別講演】巨大ひずみ加工による微細組織制御と高性能化
Microstructural Control and Property Enhancement Using Severe Plastic Deformation
九州工業大学/熊本大学/佐賀大学 堀田 善治

高圧下で大量ひずみが導入できるHPT (High-Pressure Torsion) 法やHPS (High-Pressure Sliding) 法は、代表的な巨大ひずみ加工法と知られている。高強度で脆性的な材料に適用でき、金属間化合物、セラミックス、半導体などにも適用できる特徴を有している。また、粉末の固化や異種粉末の合金化にも利用することができる。本講演では、このような難加工性材料で得られた特性向上について紹介する。まず、耐熱合金として知られるNi基超合金(Inconel718)に適用したところ、結晶粒径は100 nmほどに微細化され、800℃で400%以上の超塑性を示し、成形性の悪いInconel718のカップ状成形ができた。水素貯蔵合金として知られるB2型のTiFe金属間化合物では、HPT加工を施すことで高温高圧水素下での事前活性化処理を要せず、水素の吸収・放出ができた。ZnOのセラミックス半導体では、HPT加工することでバンドギャップの小さいRocksalt構造の高圧相が大気圧下でも存在し、可視光線に反応する光触媒として高性能化できた。最後に、金属Baは高圧下でしか超伝導を示さないが、HPT加工することで大気圧下でも超伝導転移温度が金属では最高となる24 Kを示した。加工領域の大面積化には、加工と試料送りを交互に行うIF-HPS法が、装置を大型にすることなく効果的であり、実用性の観点からの有望性が示された。

連絡先:

担当支部役員 足立吉隆、呉松竹、尾村直紀、秋葉浩二郎