第249・250回西山記念技術講座
「環境劣化の腐食科学と防食技術の新展開」

講座の視点

水素利用など脱炭素で持続可能な社会、安全、安心で強靱な国土を構築するためには、材料の環境性能の向上が不可欠である。本講座では、金属の環境劣化現象に関する基礎である湿食から高温酸化・腐食まで広く、腐食現象の学理、防食技術を学び、さらに最新の研究成果を概観することで、新たな技術革新への糸口を学ぶことを目的とする。このため、聴講者としては、腐食防食の初学者や若い研究者・技術者のみならず材料開発、材料評価に関する研究・技術者などの参加も歓迎する。
協賛(50音順)
(公社)応用物理学会、(公社)化学工学会、(公社)計測自動制御学会、(一社)資源・素材学会、ステンレス協会、(一社)電気学会、(一社)特殊鋼倶楽部、(公社)土木学会、(一社)日本機械学会、(公社)日本技術士会、 (公社)日本金属学会、(一社)日本建築学会、(公社)日本材料学会、(一社)日本塑性加工学会、日本中性子科学会、(一社)日本熱処理技術協会、(公社)日本分析化学会、(一社)表面技術協会、(公社)腐食防食学会、物質・材料研究機構、(一社)溶接学会
1.日時・場所
第249回(大阪):2023年11月2日(木)9:00~17:15(受付時間:8:40~16:15)
【対面開催】CIVI研修センター新大阪東 7階E705会議室(大阪市東淀川区東中島1-19-4 LUCID SQUARE SHIN-OSAKA)
第250回(東京):2023年11月30日(木)9:00~17:15(受付時間:8:40~16:15)
【ハイブリッド開催】鉄鋼会館 会議室(東京都中央区日本橋茅場町3-2-10)※Cisco Webex Meetingsを使用
*今後の状況によっては、11月30日をオンライン開催とし、11月30日のみとなる場合がございます。
あらかじめ、ご了承下さい。その場合、11月2日の参加申込は自動的に11月30日に振替となります。
ご了解の上、お申込み下さい。
2.講演題目及び講演者、司会者

司会者:多田 英司(東京工業大学)※本講座の企画についての主旨説明

1) 9:00~10:00
耐食性皮膜の構造と機能~不働態皮膜の電子物性など~

大阪大学 大学院工学研究科 マテリアル生産科学専攻 教授 藤本 慎司

2) 10:00~11:00
薄鋼板の使用環境での腐食現象・防食技術とその評価

JFEスチール(株) スチール研究所 表面処理研究部 部長 平 章一郎

3) 11:00~12:00
金属の高温酸化・腐食とその防食の基礎的考え方

北海道大学 大学院工学研究院 材料科学部門 教授 林 重成

4) 13:00~14:00
実用金属材料の局部腐食現象の考え方と高耐食化への展開

東北大学 大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻 教授 武藤 泉

5) 14:00~15:00
鉄鋼材料の局部腐食と防食技術

(株)神戸製鋼所 技術開発本部 材料研究所 主任研究員 河盛 誠

6) 15:15~16:15
高強度鋼の水素脆化特性に及ぼす水素、材料および応力因子の影響

東北大学 金属材料研究所 教授 秋山 英二

7) 16:15~17:15
鉄鋼材料の水素脆化事例とその対策

日本製鉄(株) 技術開発本部 鉄鋼研究所 主席研究員 リーディングリサーチャー 大村 朋彦

3.講演内容
1)耐食性皮膜の構造と機能~不働態皮膜の電子物性など~
藤本 慎司
金属材料の耐食性などの表面機能は表面に生成する酸化物等の皮膜によってもたらされる。自発的に生成する厚さ数nm の超薄膜は不働態皮膜と呼ばれ、特にステンレス鋼などの高耐食性金属材料の不働態皮膜は非常に優れた環境遮断性を有する。不働態皮膜の構造機能については先達の優れた研究が多数あるが、半導体機能などの電子構造については未だ見解が一致しない点が多い。本稿では、導入として水溶液環境での金属材料の腐食現象の基礎を述べてから、不働態皮膜をはじめとする耐食性被膜の構造機能について概観し、さらに不働態皮膜の電子構造に関する著者らの研究成果を述べる。
2)薄鋼板の使用環境での腐食現象・防食技術とその評価
平 章一郎
薄鋼板は、自動車・家電・建材・容器など多岐にわたって使用されるが、その用途により腐食を起因とする寿命の考え方も大きく異なっている。防食の観点では、亜鉛めっきが使用されるようになって久しいが、近年ではさらなる防食強化の観点での亜鉛複合めっきの開発も盛んである。また、その寿命評価を比較的短時間で判断する促進試験についても、いかに実環境を模擬できるかという観点での模索が続き、日々進歩が見られる。本講座では、薄鋼板の使用用途に対する腐食現象の特徴、ならびに防食技術開発の進展、さらに実用化に向けた材料の評価方法の開発状況について概説する。
3)金属の高温酸化・腐食とその防食の基礎的考え方
林 重成
金属材料の高温酸化・腐食は、大気腐食や水溶液腐食と同様に、電子の授受を含む電気化学反応が基礎となる。一方、高温酸化・腐食が進行するメカニズムは大気腐食等とは異なり、より材料学的な観点からの理解が必要である。本講座では、純金属および合金の酸化から高温酸化の学理を概説した後、高温環境下において金属材料の防食のための保護性酸化スケールの形成と維持に必要となる要因を整理する。また、高温材料の強度と耐酸化性を両立させるための材料設計について著者らの最近の研究成果を例として紹介する。
4)実用金属材料の局部腐食現象の考え方と高耐食化への展開
武藤 泉
孔食、すき間腐食、粒界腐食などの局部腐食は、鉄鋼などの実用金属材料の耐用年数を左右する環境劣化現象の一つであり、工学的に重要な研究対象である。最近の研究により、局部腐食は、介在物や偏析などの材料側の不均一要因と、塩化物イオンなどの環境側の侵食性化学種の相互作用により生じる場合が多いことが明らかになってきた。本講座では、実用金属材料の局部腐食に関する考え方を環境側と材料側の両面から紹介する。また、材料側の不均一要因を不活性化するという観点から、介在物の改質に加え、CやNなどの軽元素の有効利用や高エントロピー効果を利用した耐食合金開発などの新しい取り組みについても紹介する。
5)鉄鋼材料の局部腐食と防食技術
河盛 誠
腐食環境下で使用される金属材料は、孔食やすきま腐食といった局部腐食が生じる場合がある。そのため、材料の長寿命化や安全性向上に向けては、これら局部腐食の発生機構を明らかにし、抑制する技術が重要となる。局部腐食の発生要因の追求および防食技術については、過去から現在に至るまで多くの優れた研究がなされてきた。本講演では鉄鋼材料を中心として、局部腐食の発生挙動や、局部腐食に及ぼす材料の不均一性の影響、最近の防食技術の事例等について概説する。
6) 高強度鋼の水素脆化特性に及ぼす水素、材料および応力因子の影響
秋山 英二
高強度鋼の水素脆化には水素、材料および応力の因子が関与する。棒鋼や鋼板の高強度化が進められ、また水素エネルギー利用のため高圧ガス環境にさらされる材料の安全性が重視される中で、水素脆化特性評価のニーズは高まっている。講演では、これらの因子を考慮した評価法として、ボルトを模擬した環状切欠付き丸棒試験片や、プレス成形した薄板を模擬したU曲げあるいは張出試験片を用いた水素脆化特性評価法について解説するとともに、腐食環境が水素侵入に及ぼす影響について述べる。また、腐食環境中での水素侵入挙動や鋼中の水素の拡散挙動をその場観察可能な、新規に開発したIr錯体あるいはポリアニリンを用いた水素可視化手法について紹介する。
7) 鉄鋼材料の水素脆化事例とその対策
大村 朋彦
高強度の鉄鋼材料は、水素による損傷(水素脆化)を起こすことがあり、大気腐食環境、硫化水素を含む湿潤環境、高圧水素ガス環境などでその事例が報告されている。水素脆化現象の理解には、環境から鋼中への水素侵入に始まり、最終的な破壊に至るまでの素過程を理解する必要がある。また、水素脆化の対策には、それらの素過程に及ぼす環境や材料等の作用因子を把握する必要がある。本講では、種々の環境における水素脆化の具体例、水素侵入や破壊の原因となる環境要因、材料組織と水素脆化感受性、これまでに開発された耐水素脆化鋼について概説する。
4.参加申込み
[申込方法]
Webからの申込み受付は終了致しました。参加をご希望される方は下記問合せ先までご連絡をお願い致します。
なお、開催直前のお申込みの場合、当日までにテキストがお手元に届かない場合もございます旨、ご了承ください。

本会Webサイトからの事前申込のみとします。当日参加受付は行いません。

第249回(11月2日):会場の収容人数の関係上、定員になり次第締切とします。
第250回(11月30日):会場での参加者は、収容人数の関係上、定員になり次第締切とします。
          オンラインでの参加者は、人数制限は行いません。

[支払い方法]
①クレジットカードのオンライン決済 または、②郵便振替 のいずれかの方法で、事前の入金をお願いします。
※請求書の発行は致しません。
[締め切り]
申込、入金ともに10月10日(火)までに完了するようお願いします。
10月12日(木)まで 延長しました。
  • ※入金の確認後、開催約1週間前にテキストと領収証を送付します。
  • ※ご入金後の返金および当日不参加の場合の返金はいたしませんので、ご了承下さい。
  • ※オンライン受講についての詳細は後日掲載します。
5.参加費(税込み、テキスト付)
会員8,000円、一般15,000円、学生会員1,000円、学生一般2,000円
注)会員割引は個人の会員のみ有効です。協賛団体の個人会員、学生会員も含みます。
*非会員でご参加の方で希望される方には、下記会員資格を進呈します。(入会方法は別途ご案内いたします。)
・一般(15,000円)で参加 ⇒ 2024年12月までの準会員資格
・学生一般(2,000円)で参加 ⇒ 2024年12月までの学生会員資格

★テキストは、講座終了後残部がある場合、鉄鋼協会会員価格、一般価格で販売いたします。
テキスト購入のお申込みは、出版図書案内 をご覧下さい。

問合せ先:(一社)日本鉄鋼協会 育成グループ
E-mail: educact@isij.or.jp

会場案内

大阪会場 11/2(木)
大阪会場の地図

CIVI研修センター新大阪東 7階E705会議室
(大阪市東淀川区東中島1-19-4  LUCID SQUARE SHIN-OSAKA)
 JR線:「新大阪駅」駅下車 東口から50m
 地下鉄:御堂筋線「新大阪駅」駅から徒歩5分
 http://www.civi-c.co.jp/access.html

東京会場 11/30(木)
東京会場の地図

鉄鋼会館 会議室
(東京都中央区日本橋茅場町3-2-10)
JR線:「東京駅」八重洲口より徒歩約15分
地下鉄:東西線「茅場町駅」12番出口より徒歩約5分
    日比谷線「茅場町駅」1番出口より徒歩約5分、「八丁堀駅」A5番出口より徒歩約5分
https://www.tekko-kaikan.co.jp/publics/index/4/

※講座案内のチラシはこちらからダウンロード出来ます。