日本の鉄鋼業が国際競争力を維持していくためには、鋼の成分や介在物の量・形態を決定づける製鋼プロセスにおいて、高度で厳格な制御を実現する必要がある。限られた処理時間内に目標とする成分・介在物に到達するためには速度論的評価が不可欠であるが、その速度論の中で用いられる熱力学情報の重要性は言うまでもない。また、新規なプロセスを計画・立案する際には、そのプロセスが成立するかどうかを熱力学的に評価し、開発推進の妥当性を確認する必要がある。 本専科ではこれから研究開発の中核になる世代の若手研究者を対象に、熱力学の運用能力を高めることによって、製鋼プロセスにおけるデータの整理や考察が自分自身でできるようになることを目標とする。講義では、溶銑予備処理から二次精錬における熱力学を利用した代表的な解析事例をとりあげ、使用頻度の高い熱力学の知識を概説した後に、具体な数値を使って平衡値などの計算方法を提示する。さらに、エクセルを用いて受講者自身が計算を実行する演習の時間を適宜設定する。
<講義の目次> 1.事例解析 1.1 溶銑脱りん 1.2 溶銑脱硫、溶鋼脱硫 1.3 真空脱ガス(脱炭、脱水素、脱窒素) 1.4 ステンレス・高合金精錬 1.5 介在物制御 1.6 トランプエレメント除去 1.7 酸素濃淡電池を利用したセンサー 1.8 耐火物
2.冶金反応の熱力学 (事例解析の中で適宜説明) 2.1ガス・メタル間反応の熱力学 2.2スラグ・メタル間反応の熱力学 2.3 介在物・メタル間反応の熱力学 3.熱力学の基礎 (資料のみ) 3.1熱力学諸量 3.2電気化学の基礎 3.3 状態図 |