第72回白石記念講座「進化するポリマー-自動車における金属材料との共存共栄-」
新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のため、開催を延期いたします。延期の日程は未定です。 |
金属材料から見て、ポリマー(高分子材料)はこれまで競合材料、代替材料として扱われることが多かった。一方で近年複数の材料を適材適所で使用し、軽量化や特性向上を図る、いわゆる「マルチマテリアル」化という考え方が広まるなど金属材料とポリマーのそれぞれの特性を生かす努力が求められてきている。本講座では鉄鋼を中心とした金属材料の最大の用途先であり、かつその軽量化への強い要求からポリマーの使用量が増加している自動車用材料を話題の中心とし、全体的な解説から車体、エンジン、タイヤなどの各部材におけるポリマー使用の実績と将来、また金属材料とポリマーとの接合、トライボロジーといった両者の共存のためのキーテクノロジーといった点について概説いただく。本講座を金属材料とポリマーが共存共栄して発展していく未来を考える場としたい。 |
1.日時・場所 2020年10月6日(火)9:30~16:45 受付時間 9:00~14:45
2.講演題目・講演者,司会者
司会者:佐藤 千明(東京工業大学) | |
1) 9:30~10:30 | 【基調講演】ポリマー材料の構造と力学的性質 東京農工大学 工学部 有機材料化学科 教授 斎藤 拓 |
2) 10:30~11:30 | 【基調講演】自動車材料の今後~金属・高分子を中心に 日産自動車(株) カスタマーパフォーマンス&CAE・実験技術開発本部 材料技術部 部長 福井 孝之 |
3) 12:30~13:30 | ポリマーナノアロイによる高分子新材料の創出 東レ(株) 化成品研究所 研究主幹 小林 定之 |
司会者:斎藤 拓(東京農工大学) | |
4) 13:30~14:30 | 自動車のマルチマテリアル化における金属と高分子の接合技術 東京工業大学 未来産業技術研究所 教授 佐藤 千明 |
5) 14:45~15:45 | タイヤ用スチールコードとゴムとの接着界面観察 横浜ゴム(株) 研究先行開発本部 材料機能研究室 研究室長 網野 直也 |
6) 15:45~16:45 | 自動車の電動パワーステアリングにおける金属と樹脂歯車のトライボロジー挙動 日本精工(株) コア技術研究開発センター 有機新素材研究グループ グループマネジャー 村上 豪 |
3.講演内容
ポリマーは強固な共有結合で結びついた長い分子鎖から成り、分子内で回転しながら変形する。非晶状態では絡み合った糸まり状の構造をしているが、熱処理などにより結晶化させると硬い結晶相と軟らかい非晶相とのコンポジットになり、延伸すると分子鎖が配向して異方的な性質を示す材料になる。このような構造の違いにより、同じ素材であっても多様な力学的性質が発現される。本講では、ポリマー材料に特徴的な構造とそれにもとづく変形や力学的性質に関する基礎的な概念について、金属材料との比較も行いながら説明する。また、ミルフィーユ構造を形成させることによる高強度化やポリマーブレンドの力学的性質についても言及する。
100年に一度の革命と謳われるCASEや環境規制強化を含め自動車産業を取り巻く環境は年々厳しくなっている。その中でもCO2削減は重要な課題であり、材料が大きく貢献できるのは車両の軽量化である。自動車には、代表的な材料として、鉄・アルミ・樹脂が使われているが、その内の樹脂は近年、使用量が増える傾向にある。一方で、お客様にアフォーダブルな価格で自動車を提供することも我々の使命であり、コストも重要な視点となっており、その結果、マルチマテリアル化というのが現在のトレンドとなっている。本講演では、車両軽量化における各材料の使い分けの考え方、今後解かなければならない更なる課題について述べ、今後の材料技術開発の方向性について解説する。
ポリマー材料の高機能化・高付加価値化を実現する有効な手段として、ポリマーアロイ技術が挙げられ、本法による新素材開発が進展している。しかしながら種類の異なるポリマー同士は溶け合わないため、単純に機械的に混ぜ合わせるだけでは良好な材料物性が得られない。ポリマーアロイにおいては、相構造制御、並びに構造と物性は常に重要な主題となっている。
さらにポリマーアロイにおいて、ナノメートルオーダーで分散構造を形成させることにより、特異な高性能化効果が得られる例が見出され、さらに近年では実用的なエンジニアリングプラスチックの分野への応用例が報告されている。これらのアロイの概要と材料の特徴について述べる。
自動車の軽量化に必須の材料置換、また、その先にあるマルチマテリアル化について、接合技術の観点で講演する。特に、金属と高分子の接合、並びに接着剤を用いた接合について言及する。このような異種材料を接合する場合に問題となるのは、電食と熱応力である。本講演では、この様な観点に対しても言及する。
自動車用タイヤはスチールコードで補強することによって、耐久性や運動性能を向上させている。スチールコードとゴムは強固に接着しているが、その接着力はタイヤの使用に伴って徐々に低下する。接着力が極度に低下しスチールコードとゴムの剥離が起こった場合には、タイヤが破裂し大事故につながる恐れがある。したがって高い接着力を維持する技術が求められており、そのために接着界面の経時による変化の様子を観察する手法が必要となっている。本講座では、放射光光電子分光法を用いて接着界面の化学状態を観察した結果や集束イオンビームと電子顕微鏡を用いて接着界面を3次元で直接観察した結果を紹介する。
金属材料に代わってポリマーが使われる理由としてまず思い浮かぶのは、軽さと錆びない点であろう。また、樹脂成形品で考えると、金属部品との一体成形が容易であることや加工レスで製品を仕上げられる点も長所と捉えられる。これらに加え,トライボロジー特性(摩擦・摩耗など)に優れる点もポリマーが選択される重要な特長の一つである。本講座では、ポリマーのトライボロジー特性を活かした応用製品の一つである樹脂歯車に焦点を当てる。題材は自動車の電動パワーステアリングに使われる歯車であり、この事例を通して、トライボロジー製品としての樹脂歯車の特徴に加え、金属部品と組み合わされることで、はじめて狙い通りの性能が発揮されるメカニズムの面白さを解説する。
4.事前申込み:不要5.参加費(税込,テキスト付)
注)会員割引は個人の会員のみ有効です.協賛団体の個人会員,学生会員も含みます.
受付で本会あるいは協賛団体の会員証をご提示下さい.
テキスト購入のお申込みは,本会HPをご覧下さい.
問合せ先:(一社)日本鉄鋼協会 育成グループ TEL: 03-3669-5933 FAX: 03-3669-5934 E-mail: educact@isij.or.jp |
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