鉄鋼プレゼンス委員会 歴史を変える転換技術研究フォーラム 「第45回 歴史を変える転換技術研究会」開催のお知らせ
第45回研究会では鉄鋼産業とリン産業の産業共生に関する技術転換について議論を行います。多数の方々にご参加頂き活発な討論をお願い申し上げます。 テーマ:鉄鋼業とリン産業の産業共生に関わる技術転換 1.日時:2019年7月29日(月) 13:00~17:00
3.講演スケジュール:(時間は目安です) 13:00~13:05 趣旨説明および講師紹介 座長 4.内容:13:05~13:35「リン資源問題とは何か(基調講演)」 大竹 久夫氏(大阪大学 名誉教授、(一社)リン循環産業振興機構理事長) 13:35~14:05「リンの資源フローと鉄鋼スラグの位置づけ(基調講演)」松八重 一代 氏(東北大学 教授) 14:05~14:30「日本におけるリン生産技術と鉄鋼スラグのポテンシャル(基調講演)山末 英嗣氏(立命館大学 教授) 14:30~14:45「鉄鋼資源と利用技術の歴史」 稲角 忠弘氏(元 新日本製鐵) 14:45~15:00「製鋼スラグの利用に伴う製鉄プロセスの技術改革の歴史と今後の革新的発展」丸川 雄浄氏(元 住友金属工業) 15:15~17:00 パネル討論大竹 久夫氏: 人体の主要な構成元素の中でリンだけが日本に資源がない。約1.27億人の日本人が生きるためには、毎年少なくとも約4.6万トンのリンを海外から輸入し続けなければならない。リンはまた広範な製造業分野で使われており、「産業の栄養素」とも呼ぶべき重要な役割を担っている。高純度のリン素材は、半導体、液晶パネル、高機能性レンズ、自動車、二次電池、医薬品、食品(ハム、チーズ、サラダ油、ポテトチップスなど)やプラスチックの難燃剤などの広範な製造分野で使われている。にもかかわらず、リンを全面的に海外からの輸入に頼ってきた日本には、持続可能なリンのバリューチェーンが存在しない。日本には地下リン資源(リン鉱石)はないが、地上リン資源(リン含有廃棄物や脱リンスラグなどの副産物)は十分にある。本講演では、日本がリンの過度な輸入依存から脱却するために必要なリンバリューチェーンのイノベーションについて紹介する。 松八重 一代 氏: リンは農業用栄養塩として農業生産活動において不可欠な資源であり、食料消費という人類の基本的活動を支える重要資源である。一方で鉄鋼生産においては、リンは低温脆性を引き起こす不純物であり、製鋼プロセスで徹底した脱リンプロセスを介して、スラグへと排出されている。リンの一次資源供給に目を向けると、地政学的リスクや鉱石の品質低下等の問題があることが懸念されており、同様に鉄鋼資源においてもリンの含有率の高い低品質鉱石の増大が懸念されている。そのような背景のもと、鉄鋼スラグがもつリン資源としてのポテンシャルに関心が集まっている。リン資源の大半を海外に依存している我が国においては、リン資源循環は資源の安定確保並びに持続可能な資源管理のために重要である。本講演では、サプライチェーンを通じたリン資源の流れについてリソースロジスティクスの視点から解析を行った結果に基づき、鉄鋼業の役割とリン資源の中での潜在的な役割について解説する。 山末 英嗣 氏: 鉄鋼プロセスにおいてリンは禁忌な元素であり、製鉄技術の発展はリンを如何に製鋼スラグへと分配するかについてのイノベーションの連続であったという側面がある。一方、人間自身やその他の産業にとってリンは非常に重要な元素の一つである。したがって、今後はそれぞれの産業が個別にリン問題に取り組むのではなく、産業間で連携してリン問題に取り組む必要がある。発表では、これまでの製鉄とリン産業における技術発展について俯瞰し、今後あるべき産業共生の形と必要な技術について議論を行う。 稲角 忠弘 氏: 燐元素の発見は18世紀だが、古来使用経験に基づく鉄性状評価が燐別の鉱石産地だったことから燐の影響は暗黙知で認識されていたと考えられる。溶銑溶鋼製造法の時代になり燐の影響が顕著になると、使用鉱石中燐の多寡に応じた製鋼法が工夫された。鉄性状の歴史は燐との相克であり、低燐鉱石が枯渇傾向にある今、この鉄鉱石利用の歴史が参考になる。 丸川 雄浄 氏: 従来の製鋼スラグの利用は、燐が高い(1~2%)ために製銑原料として使うことができず、またその塩基度の高さ(3.0以上)のために加水反応等により膨張して、路盤材等での利用が難しく、やむなく海上埋め立て等によりコストを掛けながら廃棄処分をしてきた。そこで、スラグ中の燐濃度を5%以上に上げて燐資源としつつ、製鋼スラグの製銑原料化を進めることができる新しい資源回収新溶銑予備処理プロセスを提案する。
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