歴史を変える転換技術研究フォーラム「第42回 歴史を変える転換技術研究会」開催のお知らせ
第42回研究会では特殊鋼に関する議論を行います。多数の方々にご参加頂き活発な討論をお願い申し上げます。 テーマ:特殊鋼に関する技術転換 1.日 時:2018年7月2日(月)13:00-17:00 2.場 所:(一社)日本鉄鋼協会 第1+2会議室(鉄鋼会館5階:中央区日本橋茅場町 3-2-10) 3.スケジュール: 13:00~13:15 趣旨説明および講師紹介 座長 13:15~14:45 「人はどのように鉄を作ってきたか 製鉄技術の分かれ道 特殊鋼研究の前に」 永田 和宏 氏(東京工業大学名誉教授) 14:45~15:00 休憩 15:00~16:30 「LF法開発史(仮題)」 矢島 忠正 氏(元大同特殊鋼) 16:30~17:00 全体討論 4.内容: 永田 和宏氏: 製鉄4000年の歴史の中の技術の分かれ道を述べる。この分かれ道は、①製鉄技術の発見、②ルッペの製造、③溶鉱炉の出現、④脱炭技術、⑤転炉の発明、⑥たたら製鉄の発展、⑦鍛錬、⑧合金鋼の発明に特徴づけられる。近い将来の分かれ道は⑨脱炭素製鉄であろう。 ①製鉄技術はプロトヒッタイトが発見したと言われている。銅精錬の工程から発見されたというのが有力な説である。青銅器から鉄器への転換である。酸化銅鉱石中のシリカを分離するために鉄鉱石を用いた。さらに硫化銅鉱石を焙焼し、含まれている酸化鉄を除去するために珪砂を用いた。生産性を上げるため炉高を1m程度にすると炉内雰囲気の還元性が強くなりスラグ中に鉄塊ができた。 ②民族移動の中、紀元前1000年頃ヒッタイト帝国が崩壊し、製鉄技術が欧州からユーラシアに伝播した。鉄器時代初期のボール炉からローマ時代のドーム炉、シャフト炉、中世のレン炉の炉高も1m程度である。これらの炉では低炭素鋼塊のルッペを生産した。鋼塊を得るためには鋼を溶解する1500℃以上の高温が必要である。木炭の燃焼では得られない。鉄の酸化熱を使った。酸化製錬である。インドでは高炭素鋼のウーツ鋼がルツボで作られ、中国では紀元前に銑鉄が作られた。 ③溶けた鉄は取り扱いが便利で生産性が良い。13世紀頃西洋では高炉が出現した。なぜ高炉は炉高が高いのか。なぜ銑鉄が得られるのか。その秘密は酸化製錬から還元製錬への転換と木炭との接触による吸炭にある。 ④利便性が高いのは鋼塊である。銑鉄を鋼に変えるには、高温で空気を吹き付け生成する酸化鉄スラグとの反応で脱炭し、反応熱で溶融して鋼塊を作った。その時、鉄の酸化反応熱を利用した。わが国の大鍛冶も同じ原理を用いた。産業革命で鋼の需要が高まり、生産性を上げるため、さらに酸化鉄スラグとの接触効率を上げるためにパドリング法が開発された。 ⑤パドリング法は高炉の銑鉄生産効率に比べ非常に効率が悪かった。これを解決したのがベッセマーの転炉である。銑鉄中の炭素やシリコンの燃焼熱で燃料を使わずに高速で脱炭し、溶鋼を得た。これは、酸化鉄スラグと溶鋼の接触を撹拌により格段に大きくしたことによる。この発明により鋼の生産性と性質が格段に上がり「鋼の時代」が始まった。 ⑥わが国には6世紀後半に製鉄技術が伝来した。その後発展したたたら製鉄の炉高は1.2mである。微粉の砂鉄を原料とした粉体製錬である。酸化製錬であるにも関わらず銑鉄を製造し、操業の後半で高炭素鋼塊も製造した。吹けば飛ぶ微粉体を精錬する独特な工夫がなされた。これは世界でも独特な精錬技術である。 ⑦たたら製鉄で作られた高炭素鋼塊や大鍛冶で製造した低炭素鋼の包丁鉄、さらに錬鉄は、鍛錬を経て強靭な鉄にして製品が作られた。この時、鉄の酸化熱を利用して表面を溶かし溶接した。 ⑧錬鉄の製造までは製造過程で常に酸化鉄スラグが共存し、鉄中の酸素濃度は大きな過飽和状態にあった。転炉の発明により鉄の性質が大きく変化した。溶鋼の脱炭の進行と同時に増加する酸素濃度で凝固時にCOガスが発生しリミングアクションがおきた。これを防止するために脱酸が行われ、鉄中酸素濃度は大きく低下した。これにより本来鉄が持っていた黒錆(マグネタイト被膜)による自己修復作用がなくなった。そのため耐錆性のあるクロム合金鋼をファラデーが発明した。また、介在物も酸化鉄を主成分とした軟らかい物から、現在では非常に硬いアルミナに変わった。 ⑨地球温暖化原因物質の炭酸ガス排出規制により、化石燃料に依存しない製鉄方法が研究されている。スクラップの利用があるが、将来の鉄の需要が大きく伸びるので、製鉄は必要である。製鉄では、原料の加熱と還元、溶解が基本プロセスである。原料の加熱と還元反応のエネルギーは炭素から電気に変換できる。マイクロ波等電磁波の利用もその一つである。直接還元法による還元鉄製造と電気炉での溶解もある。しかし、銑鉄を経る間接還元法は非常に効率が良い。還元剤と銑鉄製造の炭素源を化石燃料以外から供給する方法を開発する必要がある。 参考文献:永田和宏著、人はどのように鉄を作ってきたか、ブルーバックス、講談社、2017.矢島 忠正氏: 本講演ではLF法の開発史について以下のような構成に基づき報告する。 1.歴史的沿革 ● フランス(エルー式アーク炉,1900) ● ドイツ(複合精錬法 塩基性平炉+エルー式アーク炉,1906) ● 日本(官営八幡製鉄所,) ● 複合精錬炉としてのアーク炉, 1913 2.酸性平炉製鋼法 (シリコンボイリング,1960) 3.取鍋内アルゴン攪拌精錬法 (Argon Purging, AP, 1968) ● 酸化溶鋼精錬(1968, 12) 4.LF1号の建設と操業 (1970-72) ● ASEA報告 スラグを用いる精錬不可 ● 設備概要 ● ライニング ● 立上試験(1971.4) ● 酸化溶鋼精錬(1971.5) ● スラグ組成と色彩の変化 5.加熱,攪拌,分析機器 ● ポーラス煉瓦と攪拌エネルギー (~1972) ● アーク加熱の状況と加熱効率 ● 分析機器の更新(1971-95) 6.清浄鋼の問題点(白点, 1972) 7.NSC八幡製鉄所の60t LF (1973) 8.DEW SiegenのEAF炉外精錬ライン (1990~) ● レイアウト (1990) ● 操業状況 (1995) 5.参加費:1,000円(資料代込み) 6.参加申込み:参加希望の方は、E-mailまたはFaxにて、氏名、所属、連絡先(電話、Fax、E-mail)を明記の上、下記宛お申込み下さい。 当日参加も受け付けます。
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