鉄鋼プレゼンス委員会 歴史を変える転換技術研究フォーラム「第39回 歴史を変える転換技術研究会」開催のお知らせ
耐火物に関する技術がどのように開発されてきたのかについて研究します。多数の方々にご参加頂き活発な討論をお願い申し上げます。(前回から参加費制となりました。ご容赦ください。) 1.テーマ:鉄鋼業の革新に貢献した耐火物技術(その3) 2.日 時:2017年5月22日(月)13:00~17:00 3.場 所:(一社)日本鉄鋼協会 第1+2会議室(中央区日本橋茅場町 3-2-10 鉄鋼会館5階) 4.講演スケジュール: 13:00~13:15 はじめに、講師紹介 座長 13:15~14:45 「耐火物分野へのマイクロ波応用」 平 初雄 氏 (耐火物技術協会会長、黒崎播磨・研究所長) 14:45~15:00 質疑応答 15:00~16:30 「耐火物原料、製造技術の変遷と今後の課題」 小形 昌徳 氏(品川レフラクトリーズ・執行役員 東日本工場長) 16:30~17:00 全体討論 5.内容: 平 初雄 氏: マイクロ波の応用事例として加熱分野や携帯電話に代表される通信分野、レーダーなどによる距離計測技術等があげられる。この加熱分野でマイクロ波を使用している代表的家電器具として電子レンジがあり、日常生活ではマイクロ波加熱技術を各家庭で完全に使いこなしており、非常に重用され使われている。しかし、こと工業的な面での応用という意味では、木材の乾燥やゴムの加硫などに使われているものの、あまり公表されていないのが実情であろうと思われる。ただ研究報告としては、1989年にセラミックスのマイクロ波プロセッシングが報告され、1990年代からマイクロ波を用いた有機材料の合成が、さらには1999年プレス成型された金属粉末の焼結が、鉄鋼分野では、2006年高炉工程において消費されている炭素量を削減するために、マイクロ波製鉄技術が報告されるなど研究開発が加速されている。また学振として電磁波励起反応場第188委員会が設立され、現在有機材料、無機材料、金属材料と全ての材料の加熱にまでマイクロ波応用の研究が活発に行なわれている。 マイクロ波は、加熱手段としてのシーズ技術の一つにしか過ぎないが、内部加熱、選択加熱など数々の特徴を有している。本報告では、マイクロ波の基礎及びマイクロ波発生装置などに関しても最新の情報を基に簡単に紹介させていただく。耐火物分野での実用化事例としては、不定形耐火物のマイクロ波乾燥技術がどのような経緯で開発され、実用化されてきたかを報告する。更に現在検討中である耐火物に関連する各種原料のマイクロ波合成、耐火物のマイクロ波焼成結果などについても報告する。 ただこれらの実用化を進めるうえでの課題を列挙すると、現状のマイクロ波発振源ではまだまだ高価であり、総出力として安価な大出力の発振源の出現も不可欠である。またマイクロ波技術としては高温場での①被照射物への均一照射技術、②断熱方法・構造、④導波管の耐用性、ガスシールド構造等も挙げられる。当面はこれらの課題を一つずつ地道に実験などで検証を重ねていくことで技術確立を図り、いずれは耐火物分野での画期的な省エネルギー技術として確立していきたい。 小形 昌徳 氏: 金属材料が製錬と精錬を経て原料とは異なる組成に調整されるのに対し、耐火物は耐火原料を結合させた製品であり、純度を高める工程がない。そのため耐火物では使用原料の品質が製品品質に決定的な影響を与える。かつては「原料を制する者は耐火物を制する」と言われ、ろう石原料が産する岡山県に多くの耐火物会社が進出した。戦後の高度経済成長期にはドロマイトクリンカーやマグネシアクリンカーの高純度化が進められ、製鋼用耐火物の品質向上に大きく貢献した。1980年代にはジルコン原料が高騰したため、スピネル原料の開発が進んだ。また炭素含有耐火物の開発により、鱗状黒鉛、非晶質カーボン、炭化珪素、窒化珪素など非酸化物原料の使用が広がった。 一方、同じ原料を使用しても、製造技術の進歩により緻密な結合組織や新しい原料組合せが実現されることで耐火物の特性が向上した。日本の耐火物製造の歴史は幕末の反射炉用れんがにまで遡るが、昭和初期まで耐火れんがの製造技術の進歩は緩やかであった。製造技術の革新は戦後の1951年、米国から塩基性れんがRITEXの技術導入によりもたらされた。それまでの耐火れんがは原料を粉砕しながら水分の多い練土を製造し、低圧成形する湿式成形法であったのに対し、RITEXは予め粒度調整された原料を少量のバインダーで高速混練して低水分の練土とし、高圧成形する乾式法であった。この製造技術が水平展開されて珪石れんがや粘土質れんがも品質が急速に向上し、建設用れんがとして確立された。やがて1960年代に英米で直接結合マグクロ質れんがが開発されると、日本でも高温焼成キルンが建設され、高アルミナ質やドロマイト質でも高純度原料の高温焼成による品質向上が進められた。こうして高度経済成長期における鉄鋼用耐火物の進歩では、「高純度、高圧成形、高温焼成」が重要な役割を果たした。 その後、オイルショックへの対策として製銑・製鋼・鋳造プロセスが変革されると、それに対応する新しい材質と製造設備が開発された。不焼成MgO-Cれんがの開発は大型の真空高圧プレスの発展を促し、それによって各種の炭素含有れんがが開発された。また、超微粉の分散技術によって低水分で施工される低セメント質キャスタブルが広まると、それに適したミキサーも導入された。機能性耐火物では、泥しょう鋳込み成形による溶融シリカ質ノズルの製造が始まり、やがて冷間等静圧プレス(CIP)で成形されるアルミナ・黒鉛質材料に変わった。このCIPを活用して転炉の出鋼口や底吹き羽口で大型の一体物MgO-Cれんがが実用化された。一方、断熱用には1940年代に米国で開発された耐火断熱ファイバーが1960年代に量産化され、オイルショック契機に省エネルギー化に大きく貢献した。 現在、鉄鋼向け作業用耐火物としては炭素含有不焼成れんがと不定形耐火物が主流である。不焼成れんがや不定形耐火物は、耐火物の製造に要するエネルギーは少ないものの、耐食性を確保するために高エネルギー消費原料である電融原料(アルミナ、炭化珪素、マグネシア)が多用される。例えば電融アルミナ原料は歴史が古く、1909年に米国で耐火物用に製造が開始されているが、作業用耐火物として用途が広がったのはAl2O3-SiC-Cれんがや不定形耐火物の普及によってである。電力費の問題に加え、耐火物原料(黒鉛、マグネシア、ばん土頁岩)の大規模産地を有する点から、特に日本の耐火物は中国への原料依存度が高まった。また環境問題への意識の高まりから、クロム鉱に代わる合成スピネルの活用や、リサイクル原料の活用が進んだ。さらに最近ではナノテクノロジーによる超微粒子の活用も新しい動向である。 6.参加費:1,000円 7.参加申込み:参加希望の方は、E-mailまたはFaxにて、氏名、所属、連絡先(電話、Fax、E-mail)を明記の上、下記宛お申込み下さい。当日参加も受け付けます。
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