1) 「鉄鋼の規格論-新たな理念で拓いた鉄鋼JISの国際化-」(前原 郷治) 規格の話をする。規格-所謂コンセンサス規格-は、19~20世紀の変り目に米国で発行されたのが始まりで、それは鉄鋼製品の規格であった。つまり、規格は鉄鋼から始まったのである。規格は、理念の産物である。規格は経年劣化し改正が必要だが、理念は錆つかない。100年後の20~21世紀の変わり目には、建築用鋼材、自動車用鋼板規格など重要な規格が開発される一方で、JIS-ISO整合化という重大課題に対応した時期である。この時の活動を取りあげて、規格について、また理念について語ることとする。 |
2) 「第三者適合性評価制度の戦略的活用」(井口 新一) 我が国におけるISO規格に基づく第三者適合性評価制度の開始から約20年が経ち、ISO 9001などの認証を取得している企業も数多い。しかし、これまでの我が国の第三者適合性評価制度に対する取り組みは、認証取得を企業活動に生かすにとどまり、制度そのものを優位性の提示や競争力強化に戦略的に活用する観点が不足していたといえる。今回は、制度そのものの活用、特に産業界特有の追加要求事項を付加した適合性評価制度(航空宇宙・食品などですでに展開)を構築する主体となる「スキーム・オーナー」の導入など、新しい観点から第三者適合性評価制度を捉えなおす。 |
3) 「標準化を巡る最近の動向」(山本 健一) 我が国産業のグローバルな市場展開のためには国際標準が重要であり、経済産業省としては、国際標準獲得の重要性を経済産業政策の大きな柱と位置づけて、各種施策を展開している。特に、公共財的標準化と共に、企業の利益に繋がる標準化の普及に取り組んでおり、これは標準と知的財産とを絡ませてオープン/クローズ戦略を構築して企業の利益に繋げようというものである。本講演では、標準化の事例、国際標準化を巡る動向とともに標準化政策の中から、前述の「企業利益に繋がる標準化」、迅速な国際標準提案を可能とする「トップスタンダード制度の創設」、国際会議での議論をリードできる「国際標準交渉人材育成」などについて紹介する。 |
4) 「トヨタの品質保証と鉄鋼メーカーへの期待」(宮本 眞志) お客様による製品使用の長寿命化に伴い、より耐久性、信頼性の高い製品品質が求められている。また、近年は消費者庁発足等、製品品質に対する目が日増しに厳しいものとなってきている。こうした世の中の環境、またお客様の考え方や期待値が変わってきている中、製品である自動車も、より安全で、より安心される、いいクルマづくりが求められている。本講演では、自動車メーカーの品質保証の一例として、弊社が創立以来、企業として大事にしてきた変わらぬ品質の考え方、また直近での一連の品質問題における企業として学んだ教訓を紹介する。さらに、お客様満足を実現するために、品質問題を発生させないための未然防止活動、万が一問題が起きたときにおける早期問題解決、再発防止活動を紹介するとともに、鉄鋼材料の品質保証に関して、事例を元にした取り組み、及び、鉄鋼メーカーへの期待について述べる。 |
5) 「鉄鋼製品の品質を支える非破壊検査技術」(藤原 弘次) 鉄鋼製品は自動車、エネルギー、インフラ、家電分野などで大量に使用されている。また求められる性能や、使用される環境もますます厳しくなっている。そのため大量生産の中でも高い品質が要求され、それに呼応して非破壊検査技術も高精度化が進んできている。とくに電子デバイスやコンピュータの高速化にともない、処理のディジタル化ならびに大量のデータ処理が可能となっており、センサの高性能化と合わせて高度な検査技術が開発されている。本講義では、主にオンラインで使用される非破壊検査技術の概要とともに検査技術の高精度化を実現している最近の開発事例について紹介するとともに、今後の期待について述べる。 |