一昨年の3.11東日本大震災とその後の原子力災害は、「天災にトリガーされたシステム不全によって誘発された人災」として捉えることができます。鉄鋼業においても、市場変化、海外展開、さらにはエネルギーや経済環境変化などにより、従来の想定を超える種々の「ゆらぎ」への臨機応変な対応がもとめられる場面が増えてきています。さらに、熟練作業員が大量に現場から抜けることに伴う作業品質の低下に伴うゆらぎや、老朽化する生産設備の機能不全に伴うゆらぎについても、同様に深刻な問題となって来ています。このような種々の「ゆらぎ」への対応は、人間とシステムの共創によって初めて可能になります。そのためには、想定外の災害発生時におけるシステムとしての脆弱性を事前に分析するためのシステム化技術、そして、重大事故防止のためのストレステストを、ハードウェア単体の耐久性のみならず、人・機械・環境が形づくる全体の活動にまで広げて実施するためのシステム化技術を確立する必要があります。 本シンポジウムでは、近年注目を集めている「レジリエンス」をメインテーマに据え、人間とシステムの共創によって、ゆらぎに対して復元力を有するシステムをデザインして行くための考え方と方策について議論致します。真の安全とは、単に失敗が起きないという静的な状態を意味するのではなく、「変化し続けている条件下で成功を継続できる能力」です。ロバストネスが、ゆらぎを排除することで齟齬をきたさないようにするための技術であったのに対して、レジリエンスはゆらぎを認めたうえで齟齬をきたさないようにするための技術であると言えます。本シンポジウムでは、特別講演として、我が国において「レジリエンス工学」をいち早く提唱されて来た東北大学名誉教授北村正晴先生を講師に迎え、今年度より活動を開始しています震災復興アクションプラン研究会での活動について産学からの話題提供を交えて紹介して参ります。
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