鉄鋼プロセスにおいて多量に生成される鉄鋼スラグの多くは、リサイクル材として有効に利用され、省資源や社会基盤形成の重要な役割を担っています。しかしながら、製鋼スラグについては、スラグ中に残留するフリーCaOに起因する膨張特性やアルカリ溶出特性により製鋼スラグの利用先に大きな制約が生じていることから、製鋼スラグの利用拡大を一層推し進めるためには、主に鉄鋼スラグ協会および日本鉄鋼連盟で取り組んできたスラグの利用技術だけではなく、利用しやすい製鋼スラグを作り込む技術を確立することが重要になってきています。これに対応すべく、日本鉄鋼協会では生産技術部門直轄（分野横断）でスラグ技術検討WGが設立され、スラグの技術課題を抽出検討してきました。各社アンケート調査においてフリーCaOに関する懸念が多く示され、分析技術部会からもメンバーが参加し、現状把握などを行った結果、スラグの膨張特性を支配し、かつアルカリ溶出の根幹となるスラグ中フリーCaOの分析技術の確立が急務との結論に至りました。そこで、鉄鋼スラグ中フリーCaO の分析方法を標準化（協会推奨法を作成）し、事業所間のばらつきを低減させることでスラグの利用拡大を図り、フリーCaO の定量精度の向上や製鋼プロセスの研究開発における評価信頼性向上のためにCa(OH)₂、CaCO₃、未滓化CaOおよび晶出CaOの分離分析技術を開発することを目的に検討を進めてきました。本シンポジウムでは、これらの成果報告とともに、製鋼スラグの利用拡大について活発な討論を行いたいと思います。多数の方々のご参加をお願い申し上げます。