協賛(50音順): (公社)応用物理学会、(公社)化学工学会、(一社)軽金属学会、(公社)計測自動制御学会、(一社)資源・素材学会、(社)電気学会、(公社)土木学会、(一社)日本機械学会、(公社)日本技術士会、(社)日本金属学会、(社)日本建築学会、(公社)日本材料学会、(公社)日本セラミックス協会、(社)日本塑性加工学会、(社)日本熱処理技術協会、(社)日本分析化学会、(社)腐食防食協会、(独)物質・材料研究機構、(社)溶接学会 講座の視点: 超伝導は、大電流をエネルギー損失無しに流すことを可能にするために実用的な観点からも大きな期待がもたれており、21世紀のキーテクノロジーの一つと位置付けられている。特に、昨今の環境・エネルギー問題がクローズアップされる中で、超伝導の重要性が再認識されつつある状況にあるといえる。このような応用の観点からは、優れた特性を有する超伝導材料の開発、特に線材開発が重要である。環境・エネルギーの観点から注目されるのが、いわゆる一連の高温超伝導体である。液体窒素温度(77K)以上で超伝導を示すビスマス系酸化物ならびにイットリウム系酸化物高温超伝導体については、最近では高性能な長尺線材が得られるようになって実用化が真剣に議論されるようになってきた。一方2001年に発見されたMgB2はTCが約40Kと金属系超伝導材料としては非常に高く、また機械的特性が優れているので線材化の研究が盛んに行われている。さらに、一昨年初めに鉄を含んだ新しい超伝導体が日本で発見され、学術的な興味から世界的に研究が行われて新しい展開を見せているが、線材化の研究も行われて注目される。本講座では、このような超伝導材料開発の最前線を報告していただき、低炭素社会実現のための今後の研究課題を抽出する。 |
1.期日: 2011年11月25日(金) 9:30~17:05
2.場所: コープビル 6階第3会議室 (東京都千代田区内神田1-1-12 TEL.03-3294-3821㈹)
3.プログラム: 9:30~10:30 | 超伝導の基礎ならびに超伝導線材の電力への応用 | | 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻総合研究機構准教授 下山淳一 | 10:30~11:30 | 環境・エネルギーの視点からの超伝導線材の将来展望 | | 東北大学大学院工学研究科電気・通信工学専攻教授 濱島高太郎 | 11:30~12:20 | 金材研からNIMSに至る高性能金属系超伝導線材の開発 | | (独)物質・材料研究機構中核機能部門強磁場共用ステーションステーション長 熊倉浩明 | 13:20~14:10 | イットリウム系高温超電導線材の開発と応用 | | (財)国際超電導産業技術研究センター超電導工学研究所線材研究開発部長 和泉輝郎 | 14:10~15:00 | 住友電工における高温超伝導線材の開発と応用 | | 住友電気工業(株)超電導・エネルギー技術開発部応用開発部長 林 和彦 | 15:15~16:05 | 重電メーカーにおける超伝導線材の利用技術 | | (株)日立製作所日立研究所材料研究センター環境材料プロセス研究部GP2ユニット 和久田毅 | 16:05~17:05 | 鉄系高温超伝導物質の発見と進展 | | 東京工業大学フロンティア研究センター&応用セラミックス研究所教授 細野秀雄 |
4.事前申込み: 不要
5.参加費(税込み): 会員 8,000円(含協賛団体個人会員)、一般 15,000円、学生 1,000円、学生非会員 2,000円 | ※参加者には講演テキスト1冊を無料でさしあげます。なお、当日入会の申込をし、会費と入会金(正会員10,700円、準会員4,900円、学生会員3,000円)をお支払いいただいた方は、会員参加費または学生会員参加費で参加できます。 | ※会員割引は個人の会員のみ有効です。受付で本会あるいは協賛団会の会員証をご提示下さい。 | ★テキストは、講座終了後(2011/span>年11月28日以降)残部がある場合、会員8,000円、一般15,000円で販売いたします。 | テキスト購入のお申込みは、本会の販売委託先である(株)OCSへ直接ご連絡下さい。 | (株)OCS 連絡先:TEL.03-5476-8108 FAX.03-5476-5860 E-mail:subsales@ocs.co.jp 〒108-8701 東京都港区芝浦2-9-13 |
問合せ先: (社)日本鉄鋼協会 学会・生産技術部門事務局 育成グループ 植田 〒101-0048 東京都千代田区神田司町2-2 新倉ビル2階 TEL.03-5209-7014 FAX.03-3257-1110 E-mail:educact@isij.or.jp |
[講演概要] 1)超伝導の基礎ならびに超伝導線材の電力への応用 (東京大学・下山淳一) ちょうど100年前に発見された特異な物理現象「超伝導」の最も特徴的な性質は、直流電流に対して電気抵抗が無いことである。この性質を生かした高磁場を発生する超伝導電磁石は、現在、医療用MRIやSi単結晶引上げ装置、研究用NMR、超伝導電力貯蔵装置(SMES)や磁気浮上列車などに広く利用されている。また、この数年前より、高温超伝導体と呼ばれる液体窒素冷却で超伝導状態になる線材の性能が向上し、ケーブルや様々な電力関連機器に試用されるようになっている。今日、電力・エネルギー問題がより顕著となり超伝導応用への期待が高まっていることを踏まえながら、本講座では超伝導現象、超伝導物質、超伝導線材の特徴を紹介し、近未来、遠未来における電力システムへの超伝導技術導入の効果やその普及の可能性について議論する。 | 2)環境・エネルギーの視点からの超伝導線材の将来展望 (東北大学・濱島高太郎) 二酸化炭素の排出を大幅に削減するには、再生可能エネルギーを大量に導入する必要がある。しかし、電力変動が大きいために電力系統に直連系すると電力システムが不安定になるので、電力変動のない一定電力に変換することが重要である。そのために、未来予測技術を駆使して、再生可能エネルギーを変化の激しい変動成分と比較的ゆっくりとした平均成分に分解し、それぞれ、応答性の良い超伝導電力貯蔵装置(SMES)、大容量貯蔵が可能な水素貯蔵、および電力系統へ直連系で対応する先進超電導電力変換システム(ASPCS)を提案する。本システムでは、経済性のあるMgB2超電導導体を用いたSMESと液体水素ステーションの冷媒をサーモサイフォン型冷却配管で結合する。本講座ではASPCSの概要、およびそれに用いる超伝導線材の将来展望を紹介する。 | 3)金材研からNIMSに至る高性能金属系超伝導線材の開発 (NIMS・熊倉浩明) 液体窒素温度で超伝導を示す高温酸化物超伝導材料は、発見当初から大きな注目を集め、線材化の研究も強力に進められている。一方、金属系の超伝導材料は、高温酸化物よりも超伝導転移温度がかなり低いために、高温酸化物に比べると社会における注目度は低いが、金属系超伝導材料は高温酸化物に比べて、1)線材化が容易なこと、2)機械的特性がはるかに良好なこと、3)原材料が豊富で安いこと、などの大きな利点があり、実用的な観点からは依然として重要な超伝導材料である。本講座ではNIMS(金材研)がこれまでに研究開発を進めてきたNb3Sn、Nb3AlならびにMgB2の三つの金属系超伝導線材について概略を紹介する。 | 4)イットリウム系高温超電導線材の開発と応用 (超電導工学研・和泉輝郎) イットリウム系超電導線材は、液体窒素温度以上の臨界温度を持ち、様々な特長(コスト、磁場中特性、機械的強度、交流損失など)を有することから大きな期待を受けていたが、作製難易度が高いことからその開発が遅れていた。ところが、最近の10年間で、長さは数m→1km長に、臨界電流特性も数十A→500Aを超えるなど、驚異的な進展がみられる。最近では、ケーブル、変圧器、電力貯蔵やモータなどの応用開発が開始され、一気に実用化が視野に入ってきている。これらの動きを受けて、線材は単なる長さだけではなく、各機器に適応した特別仕様(磁場中高特性線材、低交流損失線材など)を実現するために更なる発展を遂げている。本講座では、省エネ・低炭素化に大きな貢献が期待されているイットリウム系超電導線材関連技術の最新動向を報告する。 | 5)住友電工における高温超伝導線材の開発と応用 (住友電工・林 和彦) 住友電工では、ビスマス系やイットリウム系高温超伝導体の線材化に取り組んでいるが、本講座では長尺化で先行するビスマス系超伝導線材とその応用開発状況を中心に報告する。金属材料技術研究所(現物質・材料研究機構)の前田博士らによってビスマス系超伝導体が発見されて以来、住友電工ではこの物質の線材化、応用製品開発に取り組み、線材の長尺化、高性能化が着実に進展し、実用規模の応用プロトタイプの試作や実証プロジェクトが世界規模で行われるようになった。線材化では加圧焼結法の開発によりビスマス系超伝導線材が工業材料としての地位を確立し、応用分野として電力ケーブルや船舶用等の大型モータの開発が実用期を迎えようとしている。 | 6)重電メーカーにおける超伝導線材の利用技術 (日立製作所・和久田毅) 今年、超伝導現象発見100周年を迎える”超伝導”は、超伝導磁気干渉計等の超伝導の量子効果を利用する応用を除けば、超伝導磁石を利用した磁場応用を中心に開発が進められてきた。超伝導の特徴である大電流や永久電流を利用した超伝導磁石は、発生磁場強度が高く、磁場安定性に優れるため、NMR, MRIといったバイオ・医療分野、半導体単結晶引き上げ用磁石といった産業分野、また、高エネルギー物理用加速器といった先端科学の分野で利用されている。さらには、低損失、高エネルギー密度という特徴を有する超伝導は低炭素社会実現のキーテクノロジーのひとつとして注目されている。本講座では超伝導機器開発に取り組むメーカの立場から超伝導の利用について紹介する。 | 7)鉄系高温超伝導物質の発見と進展 (東京工業大学・細野秀雄) 磁性と超伝導は相性が悪いので、磁性元素の典型である鉄の化学物は超伝導体としてはあまり研究されていなかった。2006年に筆者のグループは、LeFeOPが超伝導(Tc=4K)を、2008年2月にはLaFeAsO1-xFxが、Tc=32Kのバルク超伝導を示すことを、そして、同年5月には同物質が高圧下でTcが43Kまで上昇することを報告した。これらの報告が契機となり、世界中で鉄系超伝導体の探索研究が一気に立ち上がり、1986年の銅酸化物高温超伝導体の発見以来の集中的研究が展開されている。目下の最高のTcは56Kであり、この値は銅酸化物に次いでいる。これまでに3000報を優に超える論文が出版になり、この系ならではの物性とそのオリジンがかなり明らかになりつつある。本講座では、発見までの経緯とその後の進展を概説する。 |
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