1)ユビキタス時代に向けたチタンの元素戦略 (東北大学・新家光雄) 従来のチタン合金は、V、Mo、Nb、Taなどの希少金属元素(レアメタル)を多量に添加して高性能化を達成している。しかしながらこれら元素は埋蔵量が限られており、また特定の国に偏在しているという問題も抱えており安定的供給が危惧されている。本講義は、日本におけるFe、Cr、Al、O、Nなどのユビキタス元素を活用した環境調和型のチタン合金の研究開発とその製品化事例を紹介するとともに、ユビキタス時代に向けたチタンの元素戦略を俯瞰し、解説する。
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2)日本及び世界のチタン材料の生産動向 (日本チタン協会・秋山俊一郎) 本講義は、日本及び世界のスポンジチタン、チタン展伸材の年次別総出荷量、チタン展伸材の用途別出荷量などを述べ、レアメタルをめぐる世界的な供給不安の中にあって、チタン市場の今後を展望する。また日本のチタン産業が抱える問題点や将来展望についても言及する。更にチタン分野でもめざましい成長を見せている中国に注目し、最近のチタン生産状況や研究開発事情についても触れ、今後の中国のチタン生産量の増加や技術力の向上が日本のチタン産業に与える影響についても予測する。
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3)チタン製錬、溶解技術の新しい展開 (東邦チタニウム・深澤英一) 現行の製錬法であるクロール法の限界を打破するような新しい製錬法に関する研究が、国内外において積極的に行われている。本講義は、FFC法(TiO2の直接還元プロセス)、Armstrongプロセス(TiCl4蒸気の液体Na還元)、JTS法(クロール法の連続化)などの新しい製錬法を紹介し、それらの実用化に至るまでの問題点などを述べる。また本講義は、チタンの溶解に係わる最近の技術進歩についても述べる。
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4)チタン成型技術の新しい展開 (神戸製鋼所・石外伸也) チタンは、鋼、銅合金やアルミニウム合金などの汎用合金と比較して遥かに難加工性の材料である。この難加工性の問題を克服するために、粉末冶金、精密鋳造、恒温鍛造などのニアネットシェイプ技術が以前より種々試みられてきた。本講義は、ここ10年間のこれら技術及び用途開発の新しい展開を概説する。また鍛造、熱間及び冷間圧延、押し出し加工などの技術的進展や部材の製造例についても述べる。
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5)新しい用途展開(Ⅰ)航空宇宙用途 (九州工業大学・萩原益夫) 日本では、現在に至るまでも、航空機用途の軽量耐熱チタン合金の研究は活発である。一方特に米国では、現在、航空機用途の高強度、高靭性β型合金の開発、微量ボロン添加合金、β相を含むチタン系金属間化合物の研究が活発である。本講義は、米国、日本、更には中国での航空宇宙用途のチタン合金開発の動向を述べ、またユビキタス化合金開発例も紹介する。
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6)新しい用途展開(Ⅱ)自動車用途 (新日本製鐵・小田高士) チタンを自動車のエンジン部品(エンジンバルブ、コネクティングロッドなど)、排気系、サスペンションスプリングコイルなどに適用することは、軽量化により燃費の向上に大きく寄与すると期待される。本講義は、このようなチタンの自動車部品への適用について現状を紹介するとともに、更に拡大していくために克服すべき資源的課題、コスト的課題、技術的課題などを述べる。
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7)新しい用途展開(Ⅲ)福祉機器、日用品、建材用途 (関西大学・池田勝彦) 大きな航空機産業を持たない日本では、航空機以外の分野でチタン合金の用途の拡大を図ってきた。即ち福祉機器用途スポーツ、レジャー、日用品用途、屋根、モニュメント、装飾パネルなどの建材用途などである。本講義は、このような用途の合金のユビキタス化設計思想、機械的及び化学的特性、開発の現状などを述べ、また今後更に新しい展開が期待される民生用途分野についても言及する。
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8)新しい用途展開(Ⅳ)生体・医療用途 (東北大学・成島尚之) チタンは今後、人口骨、人工歯根、歯列矯正ワイヤー、ステントなどの生体・医療分野に使用され、更にその用途は拡大されると予想されている。本講義は、既存の生体・医療用チタン合金の種類、人体とチタンとの間で起こる反応、これを制御する表面修飾処理、現在鋭意開発中の人工骨用合金、形状記憶・超弾性合金などを述べ、また今後ユビキタス化を視野に入れた克服すべき技術課題についても言及する。
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