協賛依頼先予定(50音順): エネルギー・資源学会、(社)化学工学会、(社)火力原子力発電技術協会、(社)計測自動制御学会、(社)資源・素材学会、(財)石炭エネルギーセンター、ターボ機械協会、(社)電気学会、(社)土木学会、(社)日本エネルギー学会、(社)日本ガスタービン学会、(社)日本機械学会、(社)日本技術士会、(社)日本金属学会、(社)日本建築学会、(社)日本高圧力技術協会(依頼中)、日本材料科学会、(社)日本材料学会、(社)日本塑性加工学会、(社)日本熱処理技術協会、(社)日本ボイラ協会(依頼中)、(社)日本分析化学会、(社)腐食防食協会、(独)物質・材料研究機構(依頼中)、(社)溶接学会
講座の視点: 高温で長時間使用される耐熱鋼の開発は、火力・原子力発電、化学プラント、廃棄物発電、自動車等の産業の発展の鍵を握っている。最近は、高温化によって効率を高め、省資源およびCO2排出削減を可能とする高強度高耐食耐熱鋼の開発に対するニーズが非常に強い。特に、CO2排出削減は温暖化防止に関連して緊急の課題になっている。本講座では、最近進展が著しい耐熱鋼高温化をキーワードとして、耐熱鋼の材料科学、高温クリープ強度、高温酸化・高温腐食の基礎をわかり易く解説するとともに、高効率火力発電、廃棄物発電、自動車(エンジン等)、原子力分野における高温化のための材料設計の考え方、高温化最前線を解説する。 |
1.期日・場所: 第194回 2008年 6月10日(火) 9:00~17:30 東 京 東京電機大学 7号館1階丹羽ホール (東京都千代田区神田錦町2-2 TEL.03-5280-3405(代))
第195回 2008年 6月19日(木) 9:00~17:30 神 戸 西山記念会館 大ホール (神戸市中央区脇浜町3-4-16 TEL.078-221-1746(事務室))
2.プログラム: ※講演の概要はタイトルをクリックすると見ることができます。 9:00~10:00 耐熱鋼の材料科学:微細組織 東京工業大学大学院理工学研究科材料工学専攻准教授 竹山 雅夫 10:00~11:00 耐熱鋼の高温クリープ強度の基礎 独立行政法人物質・材料研究機構新構造材料センター耐熱グループリーダー 阿部 冨士雄 11:00~12:00 耐熱鋼の高温酸化の基礎 東京工業大学大学院理工学研究科材料工学専攻教授 丸山 俊夫 13:00~13:50 高効率火力発電用耐熱鋼の高温化:ボイラ 住友金属工業(株)総合技術研究所物性・分析研究開発部部長 五十嵐 正晃 13:50~14:40 高効率火力発電用耐熱鋼の高温化:タービン系 三菱重工業(株)技術本部高砂研究所主幹研究員 角屋 好邦 15:00~15:50 高効率廃棄物・バイオマス発電用耐熱鋼の高温化 首都大学東京大学院理工学研究科機械工学専攻教授 吉葉 正行 15:50~16:40 自動車用耐熱鋼、耐熱材料の高温化 大同特殊鋼(株)研究開発本部特殊鋼研究所先進材料研究部部長 野田 俊治 16:40~17:30 原子力用耐熱鋼の高温化 北海道大学大学院工学研究科教授 鵜飼 重治
3.事前申込み: 不要
4.参加費: 会員(含協賛団体個人会員) 8,000円、一般 16,000円、 学生会員 1,000円、学生非会員 2,000円 ※参加者には講演テキスト1冊を無料でさしあげます。なお、当日入会の申込をし、会費と入会金(正会員5,800円、準会員2,400円、学生会員1,500円)をお支払いいただいた方は、会員参加費または学生会員参加費で参加できます。 ※会員割引は個人の会員のみ有効です。受付で本会あるいは協賛学協会の会員証をご提示下さい。 ★テキストは、最終講座終了後(2008年6月20日以降)残部がある場合、会員8,000円、一般16,000円で販売いたします。 テキスト購入のお申込みは、本会の販売委託先である海外新聞普及(株)へ直接ご連絡下さい。 海外新聞普及(株) 連絡先:TEL:03-5476-8437 FAX:03-3453-4341 E-mail:sales1@ocs.co.jp 〒108-8701 東京都港区芝浦2-9-13 問合せ先: (社)日本鉄鋼協会 学会・生産技術部門事務局 育成グループ 植田、金子 〒101-0048 東京都千代田区神田司町2-2 新倉ビル2階 TEL.03-5209-7014 FAX.03-3257-1110 E-mail:educact@isij.or.jp |
[講演概要] 1)耐熱鋼の材料科学:微細組織 (東工大・竹山雅夫)
なぜ金属間化合物を強化相とするオーステナイト系耐熱鋼は存在しないのであろうか。エネルギーの安定供給とCO2ガス排出削減を両立させるには発電効率に優れたA-USCプラントの実現が必要であり、700℃105hクリープ破断強度100MPaを越える高強度耐熱鍛造材料が必要となる。その候補材料として金属間化合物(GCP相)を強化相とするNi基超合金が挙げられている.しかし、同じfcc母相を有し、且つ、Crを同程度含むにも関わらず,オーステナイト系耐熱鋼の強化相は炭化物であり、その長時間クリープ強度は著しく低い。本講座では冒頭で述べた疑問に答えるべく、金属間化合物を強化相とする新しいオーステナイト系耐熱鋼の開発の可能性とその設計指導原理について、相平衡および組織制御の観点から概説する。
2)耐熱鋼の高温クリープ強度の基礎 (物材機構・阿部冨士雄) 高温構造物は、通常、10万時間クリープ破断強度を安全係数1.5で除して得られる許容応力を用いて設計される。従って、工学的には10万時間クリープ破断強度が耐熱鋼の高温強度の指標となり、これは応力を負荷してから破断するまで10万時間を要する応力をいう。実際のプラントでは、10万時間を超えても定期的に材料の健全性を評価しながら数十年間の長きにわたって使用される。本講座では、最近進展の著しい高Crフェライト系耐熱鋼を中心に、長時間クリープ強度に重点を置き、高温化のためのクリープ強化機構(固溶強化、析出-分散強化、転位強化、サブグレイン境界強化など)、クリープ寿命の支配因子、長時間使用中のクリープ強度劣化挙動と劣化を抑制する合金設計を解説する。
3)耐熱鋼の高温酸化の基礎 (東工大・丸山俊夫) 金属系材料は高温酸化雰囲気に曝される場合が多く、酸化皮膜の生成速度、金属との密着性、皮膜の剥離挙動などを理解し制御することは重要である。熱間圧延、熱処理を初めとする製造プロセスから火力発電ボイラ、蒸気タービン、ガスタービンなど発電機器、最近では高温燃料電池などの高温エネルギー変換プロセスまで、高温酸化は解決すべき重要課題である。本講座では高温酸化を理解するための基礎をやさしく解説し、皮膜の密着性や剥離挙動を支配する皮膜組織についての考え方を、以下の順に解説する。基礎:(1)高温酸化の基礎(内部酸化・外部酸化,放物線速度則)、(2)酸化物中の物質移動、応用:(3)酸化皮膜中のボイド形成(ボイラ管内壁の酸化に関係して)。
4)高効率火力発電用耐熱鋼の高温化:ボイラ (住金・五十嵐正晃) 我が国では1990年代に高温強度に優れた新しい耐熱鋼・耐熱合金が次々と開発され、従来の火力発電の蒸気条件を飛躍的に高めて高効率化した600℃級超々臨界圧発電(USC)プラントを世界に先駆けて実用化することに貢献した。このUSCプラントは石炭火力による発電量のほぼ半分を占めるに至っているが、今後も電力の安定供給とCO2のさらなる削減を両立するためには、USCプラントのさらなる高温高圧化による一層の高効率化が期待されており、700℃超級A-USCプラントの開発・実用化研究も開始されている。本講座では、将来実現するであろうA-USCプラントのボイラで使用が想定される耐熱鋼・耐熱合金の現状と課題、今後の発展の方向性について概説する。
5)高効率火力発電用耐熱鋼の高温化:タービン系 (三菱重・角屋好邦) CO2排出削減の環境問題と燃料資源の節約のために、これまで火力発電プラントの高効率化が追求されてきている。1970年代に確立された25MPa、566℃の超臨界プラントは30余年を経た現在では600℃級の超々臨界圧プラントまでが既に実用化されている。また、産業用ガスタービンでは、タービン入口ガス温度が1500℃級の高温ガスタービンが開発・運転されている。これら技術を実現させるためには、それを支える材料が不可欠であり、従来の材料では実現不可能なさまざまの要求性能を満足する新しい材料開発が長年に亘って進められてきている。本講座では、火力発電プラントの重要部品である蒸気タービンロータおよびガスタービンディスクに使用されている耐熱鋼に焦点をあてて、これまでの材料をレビューするとともに、この分野での次世代耐熱鋼について概説する。
6)高効率廃棄物・バイオマス発電用耐熱鋼の高温化 (首都大・吉葉正行) 廃棄物・バイオマス処理プラントにおける高温部材は、環境負荷低減とエネルギーの高度有効利用の観点から高温化が目覚ましく、しかも他の化石燃料プラントとは異なる塩化―酸化反応を中心としたガス腐食と溶融塩腐食とによる独特な複合腐食環境下に晒されるため、適用すべき耐熱鋼・耐熱合金における耐環境性担保の思想やアプローチも化石燃料プラント用材料とは著しく異なる。本講座では、廃棄物・バイオマス処理プラントにおける腐食環境の特徴を紹介した後、特に廃熱発電ボイラ過熱器管における複合型高温腐食の特徴、腐食機構と影響諸因子、環境側・材料側双方からの耐環境性向上策などについて概説する。さらに、廃棄物ガス化溶融プラントなどの先進型処理プラント技術において最近表面化しているトラブル事例を紹介し、その光と陰の検証を試みる。
7)自動車用耐熱鋼、耐熱材料の高温化 (大同・野田俊治) 自動車で高温にさらされる部品には、エンジンバルブ、エキゾーストマニホールド、ターボチャージャ、触媒コンバータ、EGR、マフラーなど、排気系の部品があり、これらに使用されている耐熱材料は、必要特性に応じて、耐熱鋼、ステンレス鋼、Ni基超合金やTi合金など、さまざまな材料が使い分けられている。CO2削減のため、現在各自動車メーカーでは、燃費改善のためのさまざまな対策が行われている。その一つの結果として、燃焼温度の高温化があげられる。本講座では、排気系部品の高温化に対する材料開発の現状について概説する。
8)原子力用耐熱鋼の高温化 (北大・鵜飼重治) 次世代高速炉の燃料被覆管として開発されている酸化物分散強化型(ODS)フェライト鋼は、耐照射性が格段に優れたフェライト鋼に酸化物粒子を微細分散して高温強度を飛躍的に向上させた材料である。その特徴は、メカニカルアロイングによる酸化物粒子のナノスケール超微細分散と相変態を伴う加工・熱処理によるフェライト母相の複相組織形成にある。このような組織に対応して、ODSフェライト鋼は力学特性の面からは繊維強化複合材料的な振舞いを示す極めて興味ある材料である。本講座では、ODSフェライト鋼被覆管の製造技術や優れた高温強度の発現機構について、ナノ複合材料の視点から解説する。 |