第188・189回西山記念技術講座 「特殊鋼棒線の最近の進歩」
第188回 2006年 6月 1日(木) 9:00~16:45 東 京 東京電機大学 7号館1階丹羽ホール (東京都千代田区神田錦町2-2 TEL.03-5280-3405(代)) 第189回 2006年 6月15日(木) 9:00~16:45 名 古 屋 名古屋大学 シンポジオン (名古屋市千種区不老町) 2.プログラム: ※講演の概要はタイトルをクリックすると見ることができます。 9:00~10:00 高強度鋼の疲労強度に及ぼす介在物、負荷形式、水素の影響 九州大学大学院工学研究院機械科学部門理事・副学長 村上 敬宜 10:00~11:00 自動車メーカーからの特殊鋼棒線材料への要望 日産自動車(株)材料技術部金属材料グループ金属材料技術開発主管 岡田 義夫 11:00~11:45 ばね鋼・ボルト用鋼の最近の進歩 (株)神戸製鋼所神戸製鉄所条鋼技術部条鋼開発室室長 茨木 信彦 12:45~13:30 表面処理用鋼 大同特殊鋼(株)技術開発研究所自動車用鋼研究部主任部員 紅林 豊 13:30~14:15 軸受鋼技術の最前線 山陽特殊製鋼(株)研究・開発センター軸受・構造用鋼グループグループ長 平岡 和彦 14:15~15:00 高炭素鋼線の最近の進歩 新日本製鐵(株)鉄鋼研究所鋼材第二研究部主幹研究員 樽井 敏三 15:15~16:00 炭素鋼・非調質鋼の開発動向 JFE条鋼(株)仙台製造所研究開発部部長 白神 哲夫 16:00~16:45 快削鋼の最近の進歩とそれを支える切削現象理解 (株)神戸製鋼所技術開発本部材料研究所専門部長 家口 浩 3.事前申込み: 不要 4.参加費: 会員(含協賛団体個人会員) 8,000円、一般 16,000円、 学生会員 1,000円、学生非会員 2,000円 ※参加者には講演テキスト1冊を無料でさしあげます。 なお、当日入会の申込をし、会費と入会金(正会員5,700円、準会員2,400円、 学生会員1,500円)をお支払いいただいた方は、会員参加費または学生会員参加費で 参加できます。 ※会員割引は個人の会員のみ有効です。 受付で本会あるいは協賛学協会の会員証をご提示下さい。 ★テキストは、最終講座終了後(2006年6月19日以降)残部がある場合、 会員8,000円、一般16,000円で販売いたします。 テキスト購入のお申込みは、本会の販売委託先である海外新聞普及(株)へ直接ご連絡下さい。 海外新聞普及(株) 連絡先:TEL:03-5476-8437 FAX:03-3453-4341 E-mail:sales1@ocs.co.jp 〒108-8701 東京都港区芝浦2-9-13
高強度鋼の疲労強度は鋼の基地組織を構成する化学成分だけでなく非金属介在物などの微小な欠陥に強く影響される。特に、10の7乗回までの疲労試験で決定される通常の疲労限度の消滅は介在物がトラップする水素が原因となるので、10の7乗回を越える長寿命の疲労試験が必要である。介在物の影響は引張・圧縮、曲げやねじりなどの負荷形式によっても影響の現れ方が異なってくる。また、介在物は寸法が大きいものほど疲労強度を低下させるので鋼の清浄度の定量的評価が必要である。疲労強度の観点からの鋼の品質管理には介在物の極値統計評価法が有益であるので、超長寿命疲労強度設計への応用法を紹介する。水素の影響は、燃料電池システムに代表される水素エネルギー利用においても重要な課題であるので、最近の新しい実験結果やそれに基づく水素脆化の本質に関わる事例を紹介する。 2)自動車メーカーからの特殊鋼棒線材料への要望 (日産・岡田義夫) 自動車の基本性能は「走る・止まる・曲がる」であり、このどれかひとつでも欠ければ自動車としての機能は果たすことはできない。この全ての性能に大きく関わっている材料が特殊鋼である。特殊鋼が使用される部品には、高い強度と信頼性が要求されるだけでなく、製造性、原価に対する要求も大きい。加えて、最近では二酸化炭素排出量の削減、省エネルギー、省資源などの環境への配慮という観点からの要求がますます高まってきており、特殊鋼に要求される性能は一層高度になっている。本講演では、自動車における特殊鋼の高強度化、熱処理省略、原価低減などの観点から、これまでの技術を概説するとともに、将来像についても展望する。 3)ばね鋼・ボルト用鋼の最近の進歩 (神鋼・茨木信彦) 地球環境に対する関心の高まりから、自動車の燃費向上、CO 2 排出量の削減が要望され、車体重量の軽量化が強く指向されてきた。このため自動車のエンジン部品、足回部品などに使用されるばね、ボルトにおいても高強度化が要望されてきた。ばね、ボルトは自動車に使用される他の部品に比べ高い引張強度で使用されるため、その高強度化においては疵あるいは非金属介在物などの欠陥による疲労強度の低下、腐食環境下での疲労強度の低下、水素感受性の増大に伴う遅れ破壊の発生など解決しなければならない多くの技術課題があった。本講演では、ばね鋼、ボルト用鋼の高強度化の考え方と開発状況および最近の研究動向について紹介する。 4)表面処理用鋼 (大同・紅林豊) 浸炭、軟窒化、高周波焼入れなどに代表される表面処理技術は、部品の高強度化に不可欠な技術であり、現在に至るまでにさまざまな技術確立がなされてきた。また材料分野においても1980年代以降、継続して高強度材料の開発が進められており、多様化するニーズに対応してきている。本講演では、高強度材料を主体として、現在までに開発されてきた高強度化技術を概説するとともに、今後の高強度化の展望について紹介する。 5)軸受鋼技術の最前線 (山特・平岡和彦) 軸受鋼に対しては、その用途上、長寿命化をはじめとする高位の品質が常に要求されている。その品質実現のためには、鋼材の造り込みから最終製品までの技術についての一貫した理解が重要である。この観点を基軸として鋼材製造、鋼材成分、熱処理、加工の各技術について解説を行う。またその中で、近年の技術動向や最先端技術開発の紹介も行う。軸受鋼においては転動疲労寿命との関係が深い非金属介在物評価が重要視されており、最近注目を浴びている超音波探傷や極値統計による鋼材の清浄度評価技術については事例による詳細な解説を行いたい。 6)高炭素鋼線の最近の進歩 (新日鐵・樽井敏三) パーライト鋼を伸線加工によって強化した高炭素鋼線(ピアノ線)は、量産鋼種の中で最も強度が高い材料として知られている。高炭素鋼線は、スチールコード、橋梁用鋼線、PC鋼線など広範囲に使用され工業的にも重要な地位を占めている。近年、高炭素鋼線の高強度化が著しく進展し、また、伸線加工によるナノレベルでの組織変化やセメンタイトの分解挙動なども明確になってきた。本講演では、各種高炭素鋼線の高強度化技術、高強度化の阻害要因であるデラミネーション防止技術、微視的組織変化やセメンタイト分解挙動と機械的特性の関係などに関する最近の知見を整理するとともに今後の課題について述べる。 7)炭素鋼・非調質鋼の開発動向 (JFE条鋼・白神哲夫) 炭素鋼の生産量は特殊鋼棒線の中でも圧倒的なシェアを占める。それだけに用途・必要性能も幅広い。本報告では本講座の他分野に含まれない低炭素・中炭素鋼を中心に用途から来る要求性能と一般的なニーズ(例えば、低コスト、高性能等)を検討し、開発動向を述べる。また、非調質鋼は熱処理省略の観点から一分野を築いてきたが、これについては別立てで開発動向をまとめる。 地球環境問題に端を発して、快削鋼の鉛フリー化のみならず、被削性のさらなる改善も強く求められている。鋼材の被削性改善を鉛無添加で得ることを目的とした研究開発が近年盛んに行われた結果、実用化に結びついた成果もいくつか報告されている。これらの成果の多くは、多年にわたる切削現象とメカニズムの理解の深化をベースとしながら、新しい発想と周辺技術の進歩を合わせることで得られた。従って、快削鋼の最近の進歩に合わせ、そのベースとなった切削現象とメカニズム理解、並びに周辺技術の現状についてもまとめ、これからこの分野を勉強される方の一助にしたい。 |