「表面処理鋼板の技術展開と防錆機構解明の最前線」 (社)日本鉄鋼協会 第186・187回西山記念技術講座開催のお知らせ
[講演概要] 1)自動車用表面処理鋼板の開発動向 (新日鐵・宮坂明博) 自動車を取り巻く客観情勢および規制とそれに基づいた車体用鋼板へのニーズをもとに、該ニーズに応える表面処理鋼板の開発状況を紹介する。また新しい車体加工・組立技術に対応するための鋼板、今後の展望などについても述べる。2)家電用表面処理鋼板の開発動向 (JFE・加藤千昭) 家電用表面処理鋼板は、OA・AV機器の内装部品を用途とする耐指紋性、潤滑性などを有する高機能化成処理鋼板と、冷蔵庫、エアコンなどの外装部品を対象とし家電メーカーでの塗装不要なプレコート鋼板(塗装鋼板)に大別される。これらの鋼板では、古くから六価クロムを使用した防錆処理技術が適用されてきた。ところが最近、電気電子機器を対象とした有害物質(六価クロム、水銀、鉛など)の使用を制限する動きが強化され、六価クロムを含まない化成処理鋼板、塗装鋼板が開発・商品化された。本報告では、これらの開発鋼板の品質特性を報告するとともに、六価クロムを含まない防錆技術について解説する。3)建材用表面処理鋼板の開発動向 (日新・斎藤実) 建材分野では、高耐食で長寿命という観点から、塗装下地用途も含めて従来の溶融亜鉛めっき鋼板に代わって溶融Zn-Al系合金めっき鋼板の使用が急速に拡大している。また最近、日本発の新たな合金めっき鋼板として、溶融Zn-Al-Mg系合金めっき鋼板が開発され、建材用のめっき鋼板に新たな流れが生まれてきている。一方、建材用塗装鋼板についても、遮熱性、耐汚染性等の新たな特性や新規な意匠を付与した塗装鋼板が開発されている。本講演では、このような最近の建材分野における表面処理鋼板の開発動向と今後の展開について述べる。4)環境に優しい缶用材料の開発動向 (東洋鈑・毎田知正) 現在、地球温暖化の防止、自動車、電気・電子機器における有害物質の規制等に対応するための環境対策が非常に重要になってきている。この様な状況下、缶用材料メーカー、製缶メーカーでは、省資源、省エネルギー、環境汚染物質の排除を目的とした缶用材料の新規表面処理、樹脂フィルムのラミネート化について種々の検討がなされてきた。本報告では、無機物と有機物の複合等新規表面処理の開発動向、さらに、表面処理との組み合わせにおいて耐食性に効果を発揮してきた従来の塗料に替わる有機物質の金属被覆方法であるフィルムラミネート、溶融樹脂の直接押出ラミネートの技術動向について述べる。5)Zn系表面処理鋼板の防錆機構 (東工大・水流徹) Zn系表面処理鋼板の防錆機構については、従来からZnの犠牲防食作用とZnの腐食生成物による環境遮断効果が主要な防錆作用として理解されてきた。しかしながら、これらの作用とともにZnの腐食生成物のカソード反応抑制や溶出したZnイオンによる防錆作用、あるいは腐食生成物の半導体特性に基づく防錆機構の説明などが注目されている。本講では、腐食生成物の組成、構造、化学溶解性、半導体特性などの物理化学的特性に関する最近の研究成果をもとに、表面処理鋼板の防錆機構について解説する。6)Zn系表面処理鋼板評価方法・寿命予測技術 (JFE・藤田栄) 自動車・家電・建材で使用されているZn系表面処理鋼板の実環境での腐食挙動、加速腐食試験、寿命予測の現状と課題について紹介する。7)合金化溶融亜鉛めっき鋼板の皮膜構造解析とその制御技術 (住金・土岐保) 加工性、溶接性、耐食性に優れる自動車用合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、製造原理(合金化挙動)、合金相の物性(単相合金)・機械的特性の最新技術、および今後の展開について述べる。8)熱・電磁波特性におよぼす表面処理皮膜構造とその発現機構 (神鋼・平野康雄) 近年の家電、OA機器の高性能化は、マイクロプロセッサの高速化、プリント回路基板の高密度実装などによって支えられている。マイクロプロセッサの高速化は消費電力の増大により熱発生を伴い、また、デジタル回路を構成するトランジスタはオンオフを繰り返すスイッチとして動作し、その際非常に速い電流変化が生じ、回路の構造によっては高レベルの電磁波を放射する。このような熱・電磁波の問題に対して、機器の筐体・シャーシとして使われている鋼板からのソリューション提案がなされている。本講座では、熱対策、電磁波対策を表面処理鋼板において実現する機構を紹介すると同時に、自動車分野への展開等今後について展望する。 |