「物流効率化を支えるハードとソフト/物流と経営戦略」 (社)日本鉄鋼協会 第56回白石記念講座開催のお知らせ
[講演概要] 1)鉄鋼物流関連システムの発展と今後 (JFE技研・木村亮介) 鉄鋼の物流技術は、重量物の搬送、設備の連続化や自動化において独自の進歩をしてきたが、近年では、計算機能力の飛躍的向上にともない、物流計画の多目的最適化や離散事象シミュレーションの適用等、システム面において幅広く応用開発が行われている。計画問題では、配車・配船計画、倉庫運用の個別計画から物の流れにそってSCMシステムを適用する一貫計画があり、また、物流シミュレーションでは、移動機等のプロセス個別の能力検証から工場内通過工程や構外物流網のネットワークの能力検証や最適化が行われている。本講では、これらのシステム技術の進歩と展望について述べる。2)製鋼物流効率化手法 (住金小倉・谷﨑隆士) 製鋼工場では、高温・大量の溶鋼を入れた鍋を転炉~2次精錬~連続鋳造と運搬しながら、各設備で様々な処理を行う。また、鋼種に応じた転炉~連続鋳造の運搬時間の遵守、運搬設備であるクレーンの干渉等の非常に多くの制約を有する。従って、生産・物流スケジューリングシステムの役割が重要となるが、多くの複雑な制約を有するため、厳密なスケジュールを実用時間内に求めることは非常に困難である。本講演では、製鋼工場の物流効率化手法として生産・物流スケジューリング問題について考える。ボトルネック工程である連続鋳造の作業順序を固定したバックワード・フォワードの2段階スケジューリング方式と、物流シミュレーションを組み合わせた方法について報告する。3)製鉄所における入荷、出荷物流最適化支援のためのシステム構築 (神鋼・岩谷敏治) 鉄鋼業では、原料入荷と製品出荷の双方において船舶が主要輸送手段となる。このとき、クレーン、着岸バース、等の製鉄所内の設備割り当てや、船舶の手配を決定する計画問題が発生し、その巧拙により、船舶手配コスト、設備稼動コスト、及び製鉄所の操業効率、等の評価指標が影響を受ける。本報告では、原料入荷船舶計画問題、及び製品出荷船舶計画問題に対し、最適化手法を活用したシステム構築例を報告する。両問題には、評価関数が多目的性を持ち、船舶到着時刻、等の入力が確率的に与えられるといった共通点があるが、制約条件、意思決定のプロセス、等は固有の特徴をもつ。各問題を分析し適用した最適化手法を中心に紹介する。4)ICタグの現状と適用事例 (日立製作所・高津戸智史) ICタグはバーコードに変わる固体認識技術としてICタグが注目を集めており、書籍、家電品などを中心として商品のトレース、循環型物流システムへの期待が膨らんでいる。一方、ICタグは製造現場への適用も期待されているが、製造現場でのICタグの使用環境など技術的問題、ICタグのメリットとコストの問題など課題も多いのが現状である。本発表では、ICタグの技術及び将来方向を説明し、現時点でのICタグを適用した事例を紹介していく。さらに製造現場を中心とする物流へのICタグの適用可能性を探っていく。 5)物流/SCMと経営戦略 (i2テクノロジーズジャパン・貝原雅美) 企業間を結ぶSCMにおいては、引き合い・内示・注文といった需要情報、販売計画・販売予測といった販売管理情報、生産計画・能力計画・製造計画といった生産管理情報等の連携の必要性はもとより、特に鉄鋼業においては出荷計画に同期した配船/配車計画、船やトラックの荷積み/積降ろし計画といった流通/物流情報の戦略的な活用が非常に重要な要素となってくる。これら物流面に焦点をあて、経営戦略という観点からSCMにおける物流の考え方を事例を交えて紹介する。6)製鉄所におけるSCM導入事例 (新日鐵・後川隆文) 八幡製鐵所と自動車会社間における鋼材の納入指示から納品に至る業務にSCM(サプライ・チェーンマネジメント)を適用した業務システムを導入した。具体的には、(1)サプライヤーおよびユーザー双方の従来業務の実体を調査し、(2)従来業務が抱える問題点や課題を抽出し、双方の業務効率化(デメリット排除)を達成出来る新業務モデルを考案し、(3)最適化技法やシミュレーション予測などを適用すると共に、(4)ITの活用による情報連携を強化し相互メリットを享受出来る仕組みを実現した。業務システムの導入に至ったいきさつ並びに構築に至る取組み事例の紹介や考え方を中心に、今後の製鐵所におけるSCMのあり方などについて報告する。 7)JIT生産・物流システムの進化への模索 (愛知工大・大野勝久) IT革命による情報コストの劇的な低下をうけ、JIT(ジャストインタイム)生産・物流システムもかんばんを脱却したIT活用による進化を検討すべき時機である。近年、人工知能の分野において強化学習とも呼ばれる、ニューロ・ダイナミックプログラミング(ニューロDP)が不確定環境下における多方面の最適制御問題へ適用され、そのアルゴリズムが活発に開発されている。本講演では、生産・物流管理方式間の従来の比較研究を踏まえ、プルとプッシュ方式間あるいはプル方式とニューロDPによる最良制御政策間の性能比較を示し、IT活用によるJIT生産・物流システムの進化にたいする模索を紹介したい。ご批判を仰ぎたい。 |