1)焼結操業技術の最近の進歩と今後の展開 (住金・川口尊三) |
ここ10年の焼結鉱製造は、資源、環境への対応を取りつつ生産性および品質改善を推進してきた「対応の時代」と言える。高結晶水鉱石であるピソライト鉱を多量使用しつつ、焼結鉱の低スラグ化推進の実績は、これまでの造粒技術や装入技術の開発成果を物語る。高炉高微粉炭操業においては、焼結鉱品質の重要性を再認識させられた。社会的にも注目されたダイオキシン低減についても、多量ガス処理技術および産学共同研究会が威力を発揮した。 本講演では、この10年の焼結技術の変遷を総括するとともに、将来原料である微粉系高結晶水鉱石マラマンバ鉱や高品質焼結鉱をめざした研究展望を解説する。
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2)コークス製造技術の現状と展望 (JFE・板垣省三) |
コークス製造においても国際競争力を維持するため、省力・省エネルギーおよび安価非微粘結炭の使用拡大などの合理化対策を推進してきた。一方、コークス炉の老朽化対応として溶射や熱間積み替え等の各種補修技術を開発、適用によりコークス炉の寿命延長を図っている。 このような状況の中で、コークス製造プロセスでの技術開発の動向を、安価な非微粘結炭利用、コークス炉操業、炉体延命および環境対策の面から総括するとともに、コークス炉の老朽化の進展やCO2問題など厳しさを増す環境情勢下で、今後取り組むべき技術課題を整理し、基盤研究の動向と合わせて将来展望を概説する。
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3)次世代コークス炉開発の現状 (新日鐵・加藤健次) |
現在、わが国で稼働中のコークス炉群は、昭和40年代の経済高度成長期に集中的に建設されたために、21世紀初頭の近い将来に一斉に老朽更新時期を迎えることになる。そこで、来るべきコークス炉のリプレースに向けて、次世代コークス製造プロセスの開発が鋭意進められている。 本講演では、①世界における新コークス製造技術(広幅炉、ジャンボコークス炉、ヒートリカバリー炉等)の開発状況、②わが国で開発中の次世代コークス製造技術(SCOPE21)、③産学共同で研究を行っている鉄鋼協会のコークスに関する研究会の研究成果などを紹介し、魅力あるコークス製造プロセスおよび国際的競争力のある技術開発の課題への取り組みについて考察する。
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4)高炉の操業技術と設備技術 (新日鐵・内藤誠章) |
ここ10数年の間に、高炉操業技術も大きな変革を遂げている。特に、1億トン前後の粗鋼生産を維持するための高炉高出銑比操業をベースに、高結晶水鉱石や非微粘結炭等の安価原燃料を多量使用した焼結鉱、コークス使用下で、コークス比低減のための微粉炭多量吹込み技術が推進された。 操業技術として、中心コークス装入を始めとした装入装置の改善や低スラグ化、鉱石層薄層化等の焼結鉱高温性状改善のための施策も実施された。設備技術に関しては、設備の長寿命化や高炉の短期改修等が進められている。 本講演では、10数年に亘る高炉操業技術、設備技術の進歩を概観し、今後の展望を述べる。
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5)高炉の理論解析の進歩 (東北大・埜上 洋) |
高炉製銑プロセスの理論解析は、従来ブラックボックスとして扱われてきた高炉内における反応,流動,伝熱など速度論に基づく反応解析に必要とされる現象の解明と計算機技術の進展にともなって、定常一次元から,非定常多次元へと展開されてきた。 まず本講演ではこれまでの高炉のプロセス解析法の進歩を概説する。次に、近年種々の高炉モデル解析で用いられている多流体理論に基づく解析モデルの構成を説明するとともに、実際にプロセス解析で得られた結果とその応用例について示す。さらに現在主流となっているモデルおよびサブモデルの構成の問題点と今後のモデル開発の展望について述べる。
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6)製銑技術の環境・リサイクルへの展開 (JFE・有山達郎) |
21世紀は環境の世紀と称され、環境・リサイクルへの取り組みが企業経営の中でも重要なウエイトを占めるようになった。鉄鋼業は今まで様々な環境問題への対応を図ってきたが、さらに製銑工程に有する高温プロセス技術などを活用し、リサイクルへの積極的な取り組みを開始した。例えば使用済みプラスチックのリサイクルなどを通じ製鉄所のイメージを変えつつある。さらに製鉄所は様々な環境・リサイクルへのポテンシャルを有すると思われる。今後、都市型製鉄所は周辺社会との共存を強化した「環境調和型製鉄所」に変わることもできる。 本講演では製鉄プロセスを活用した新しいリサイクル技術の紹介と今後の展望について述べる。
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7)新製鉄プロセスと新技術の萌芽 (神鋼・松井良行) |
新製鉄プロセスとしては、世界的には溶融還元法の多様な開発が行われる一方で、原理的に異なるロータリーハース法を中心とした新製鉄技術の開発が展開されてきている。しかしながら、溶銑供給プロセス、すなわち、コークス炉老朽化対応および生産弾力性強化を目的としたコークスを使用しない高炉補完プロセスまでには進展していない。一方で、社会環境の要請を受けて、製鉄所廃棄物処理・資源リサイクルとして新鉄源プロセスを用いたダスト処理技術の開発が行われている。特に、ロータリーキルンによるダスト処理などは工業規模として定着してきている。 本講演では、これらの技術開発を紹介し、今後の技術開発の動向について展望したい。 |