鉄鋼プロセスの制御では、従来から制御理論は言うに及ばず、モデリング、予測、診断、信号処理、最適化などに関する数多くの理論、技術が適用されてきました。本シンポジウムでは、プロセス制御を支えてきたこのような基礎技術を取り上げ、その現状と今後の課題について討論します。 1.日時:2002年11月4日(月)10:00~16:00 2.場所:第144回秋季講演大会第8会場(大阪大学吹田キャンパス) 3.プログラム: - 司会:杉江俊治(京大)
- 10:00~11:00 「非線形最適化手法の現状」 福嶋雅夫(京大)
- 概要:最適化の手法に関する研究は、より大規模な問題を解くこと、より複雑な問題を取り扱うことを目指して着実に発展を遂げ、様々な問題を解決するための有力な手段を提供してきた。しかし、その一方で、現実の問題の大規模化・複雑化は止まることを知らず、また理論的にも実際的にも興味深い問題が発掘されてきている。本解説では、特に非線形最適化に関連する研究を中心にその現状を概観する。
- 11:00~12:00 「データマイニングとプロセスの制御・診断への応用」 山下善之(東北大)
- 概要:データマイニングと呼ばれている手法について、その概要を紹介し、その可能性と限界について述べる。その後、プロセスシステムにおける応用例として、制御ルールの抽出と異常検出の実例を示す。
- 司会:足立修一(宇都宮大)
- 13:00~14:00 「ウェーブレット変換の基本と拡張」 中静 真(東農工大)
- 概要:ウェーブレット変換は、自己相似な基底系による信号展開として多種の応用へ適用されている。本講演では、ウェーブレット変換の基本を概説し、ウェーブレット変換を用いた信号の特徴記述と信号処理への適用例を解説する。さらにウェーブレットから導出される新たな信号展開法としてウェーブレットパケット、Matchingpursuitsについて解説し、その可能性を解説する。
- 14:00~14:50 「ウェーブレット解析による制御システムにおけるデータマイニング」 笹岡英毅(山武)
- 概要:複雑なシステムを総合的に高度に操業して行くためのアプローチの一つとして、蓄積された多様・大量のデータの中から役に立つ情報を引き出し、品質改善や設備診断、最適運転等に活かすデータマイニングが盛んに行われている。ウェーブレット解析はこのようなデータマイニングに有効であり、これまでに制御システムの解析、異常診断など、様々な応用を実施してきた。本稿では、データマイニングを効率よく実施するために必要なウェーブレット解析について概説し、その具体的な応用事例として、化学プラントや空調制御における異常検知の事例や音響法を利用したベアリング異常診断の事例等について紹介する。
- 15:00~15:20 「重回帰及びニューラルネットワークによる電力需要予測技術の開発」 和嶋 潔(新日鐵)
- 概要:本稿では、当社にて取り組んだ翌日最大電力需要予測技術の開発事例について概説する。まず、予測モデルについて、重回帰、ニューラルネットワーク及び両者のハイブリッドモデルを検討し、計算例を通して各手法の予測精度を検証している。次に、需要特性に大きな影響を及ぼす季節要因をモデリングとして、季節別及び時間帯別に予測モデルを構成する手法を検討し、その評価結果について述べている。最後に、年末年始やゴールデンウィークといった、いわゆる特異日における予測精度向上策を考案し、その効果を検証している。
- 15:20~15:40 「GPによる圧延荷重予測と板厚制御への応用」 西野 都(神鋼)
- 概要:本報告では、遺伝的プログラミング(GP:Genetic Prgramming)を用いた圧延荷重モデルの構築方法と、それを活用した新しい板厚制御方法について述べる。鉄鋼プロセスの厚板圧延工程では、ユーザーニーズが年々厳格化するなかで、さらなる製品板厚精度の向上が課題となっている。板厚制御方法としては、従来より、BISRA-AGCや絶対値AGC等が用いられてきた。しかし、これらの方法では、板の偏熱が大きい場合や圧延中に相変態が起こる場合に板厚偏差を維持できないという問題があった。そこで、この問題を解決するため、新たに温度予測型FF-AGCを開発した。本AGCでは、圧延荷重モデルを用いて板温度の予測を行い、次パスのロールギャップをフィードフォワード制御する。そのため、高精度かつ高速演算可能な圧延荷重モデルが必要となる。ここでは、GPを改良し、精度と演算速度の両方を満たす圧延荷重モデルを構築した。現在、本FF-AGCは、厚板仕上ミルに適用されており、板材の長手方向板厚偏差の低減に大きく寄与している。
- 15:40~16:00 総合討論
4.参加費(テキスト代含む):1,000円(当日会場でお支払い下さい。) 5.参加申込:事前の登録は不要です。直接会場へお越し下さい。 申込み・問合せ先:(社)日本鉄鋼協会 学会・生産技術部門事務局 植田 TEL.03-5209-7013 FAX.03-3257-1110 E-mail: ueda@isij.or.jp |
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