2024年度事業計画(2024.3.1~2025.2.28)

2024年度一般社団法人日本鉄鋼協会事業計画(2024.3.1~2025.2.28)

中国の不動産市況低迷や欧米の金融引き締め長期化等による世界経済の減速、ロシアのウクライナ侵攻長期化に加え中東情勢緊迫化等の世界情勢下、日本経済は、コロナ禍からの回復が見られるものの依然先行き不透明である。

我が国の粗鋼生産量は2023暦年では8,700万トン(前年比2.5%減)、世界粗鋼生産量は18億9,204万トン(前年比0.1%増)となっている。2024年度は、前年度横ばいとなることが見通されているが、ロシア・ウクライナ戦争や中東情勢の緊迫化による資源燃料価格の高止まり、中国経済の動向、内外の金融政策の動向がリスクとして指摘されている。

鉄鋼技術・研究面については、鉄鋼新興国の追い上げは厳しさを増し、生産能力のみならず、品質面、技術面、研究面でも向上が著しい。また、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど国際社会環境の急激な変化、気候変動や頻発する大規模災害に対応できるレジリエントな社会システム構築の必要など、鉄鋼業は多くの重要課題に直面している。

このため、鉄鋼業における革新的な技術発展が不可欠となっており、本会としては、学会部門と生産技術部門の連携をより強化し、鉄鋼の学術・技術をさらに活性化するための活動を進める。

これらを踏まえ、2024年度の本会活動としては、以下の項目等の実施に重点をおいた事業活動を展開する。

具体的な施策

1.協会基本活動の活性化

  • 学会部門、生産技術部門および各委員会等の連携・協調のもと、各種大会、会議、セミナー等をより多くの参加者を得て開催するとともに、各事業の特色に応じWeb講演会などWeb/ハイブリッドの長所を活かした活動も進め、協会基本活動の強化・充実を図り、会員数の維持・増加を図る。
  • 第187回春季講演大会は3月13-15日に東京理科大学葛飾キャンパスにて開催、第188回秋季講演大会は9月18-20日に大阪大学豊中キャンパスにて開催する。
  • 論文誌「鉄と鋼」、「ISIJ Int.」は、完全オープンアクセスの学術誌として、特集号やレビュー等の企画等、それぞれの特徴を活かした編集を行い、量及び質の両面においてより高水準な情報発信を展開する。

2.鉄鋼の学術・技術の活性化

  • 学会部門と生産技術部門との連携強化をベースとして、新しい研究課題の発掘・発信を図る。
  • 学会部門ではフォーラム活動や研究会の充実、理学等も含めた新たな学術シーズの取り込みを進める。
  • 生産技術部門では部会間の情報交流促進を図り各部会活動の活性化に資する。特に、技術・技能伝承、人材育成、安全安心、環境・防災に関する活動の充実を図る。
  • 研究会Ⅰを13件(うち新規3件)、研究会Ⅱを5件(うち新規3件)、鉄鋼協会研究プロジェクトを2件(うち新規1件)実施する。鉄鋼研究振興助成を34件、鉄鋼カーボンニュートラル研究助成を15件給付する。

3.人材育成

  • 学生育成事業については、「修士学生向け鉄鋼工学概論セミナー」、「学部学生向け最先端鉄鋼体験セミナー」、「企業経営幹部による大学特別講義」等の実施・更なる充実を図る。また、2022年度に開始した高校生・高専生対象事業、①製鉄所見学事業(交通費支給)の対象拡大(大学学部から高校、高専及び大学全部(大学院を含む)に拡大)、②高校・高専への大学教育出張授業の助成事業、③高校・高専の教科で活用できる動画教材の制作を実施する。
  • 企業人材育成については、「鉄鋼工学セミナー」「同専科」、「鉄鋼工学アドバンストセミナー」の実施・更なる充実を図る。「鉄鋼工学セミナー」については、コロナ禍による中止・定員縮小の影響で参加待ち状況にあり、受講定員をコロナ禍前の水準に戻す。
  • 西山記念技術講座・白石記念講座はニーズを踏まえたタイムリーな企画を進め、内容充実を図る。
  • 2022年度に開始した会員向けWeb講演会(鉄鋼協会Web講演会、Web講演会~鉄鋼技術最前線シリーズ~、Web講座~入門講座シリーズ~)の実施・更なる充実を図る。
  • JABEE(日本技術者教育認定機構)と連携し、高等教育機関等の教育プログラムの改善・向上に貢献する。

4.戦略・連携強化

日本金属学会等の学術団体との協力を推進する。さらに日本鉄鋼連盟をはじめ、金属系材料研究開発センター、鉄鋼環境基金、鐵鋼スラグ協会、日本鋼構造協会、等の関係団体と研究助成、人材育成等の面での連携を継続・強化する。特に地球温暖化問題については、日本鉄鋼協会で取り組むべき課題を明確にし、WG等を設置して解決に向けた活動を、他学会及び他業界との連携を強化し進める。

5.内外への情報発信力の強化等

  • 2024年6月に第16回日本中国鉄鋼学術会議(於:宮崎)、11月に第7回国際鉄鋼科学シンポジウム(於:京都)、第2回地球環境のための炭素の究極利用技術に関するシンポジウム(於:奈良)を開催する。
  • 会報誌「ふぇらむ」について、更なる内容充実を図る。
  • 2021年度より5年間の科研費交付を受けている「鉄鋼論文誌の国際競争力強化」の取組継続等により、欧文誌の更なる国際的プレゼンス向上を図る。
  • 協会に蓄積する各種研究・技術情報の電子化及び利用を更に推進する。