2023年度事業計画(2023.3.1~2024.2.29)

2023年度一般社団法人日本鉄鋼協会事業計画(2023.3.1~2024.2.29)

日本経済は、米国などの主要国における金融引き締め政策を主要因とした急激な為替変動や、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した資源・エネルギー価格の高止まりなどにより厳しい状況が続いてきた。我が国経済を取り巻く環境は依然として予断を許さないが、ウィズコロナへの移行も進み、内需主導による緩やかな回復が期待される。

我が国の粗鋼生産量は2022暦年では8,923万トン (前年比7.4%減)、世界粗鋼生産量は18億7,850万トン (前年比4.2%減)となっている。2023年度は、回復していくことが期待されているが、原燃料費高騰の継続、世界の景気後退、部品等の不足による供給制約の継続が懸念される。

鉄鋼技術・研究面については、鉄鋼新興国の追い上げは厳しさを増し、生産能力のみならず、品質面、技術面、研究面でも向上が著しい。また、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど国際社会環境の急激な変化、気候変動や頻発する大規模災害に対応できるレジリエントな社会システム構築の必要など、鉄鋼業は多くの重要課題に直面している。

このため、鉄鋼業における革新的な技術発展が不可欠となっており、本会としては、学会部門と生産技術部門の連携をより強化し、鉄鋼の学術・技術をさらに活性化するための活動を進める。

これらを踏まえ、2023年度の本会活動としては、以下の項目等の実施に重点をおいた事業活動を展開する。

具体的な施策

1.協会基本活動の再活性化及び個人会員数増加対策

  • 2022年度に続き、ウィズコロナにおける本会活動の再活性化をより進める。具体的には、学会部門、生産技術部門における各種大会、会議、セミナー等を適宜適切な感染症対策を取りながらより多くの参加者を得て対面開催・ハイブリッド開催で実施するとともに、Web講演会などオンラインの長所を活かした事業も進め、協会基本活動の強化・充実を図り、会員数の維持・増加を図る。
  • 第185回春季講演大会は3月8-10日に東京大学駒場Ⅰキャンパスにて開催、第186回秋季講演大会は9月20-22日に富山大学五福キャンパスにて開催する。
  • 論文誌「鉄と鋼」、「ISIJ Int.」は、特集号の発刊等、それぞれの特徴を活かした編集を行い、完全オープンアクセス制度を備えた学術誌として、量及び質の両面においてより高水準な情報発信を展開する。

2.鉄鋼の学術・技術の活性化

  • 学会部門と生産技術部門との連携強化をベースとして、新しい研究課題の発掘・発信を図る。
  • 学会部門ではフォーラム活動や研究会の充実、理学等も含めた新たな学術シーズの取り込みを進める。
  • 生産技術部門では分野別の技術部会活動を中心に、機動的、弾力的運営を行い、特に若手技術者・研究者の育成に重点を置いた活動を進めるとともに、関連境界領域での課題にも取り組む。

3.人材育成

  • 学生育成事業については、「修士学生向け鉄鋼工学概論セミナー」、「学部学生向け最先端鉄鋼体験セミナー」、「企業経営幹部による大学特別講義」等の実施・更なる充実を図る。また、2022年度に開始した高校生・高専生対象事業、①製鉄所見学事業(交通費支給)の対象拡大(大学学部から高校、高専及び大学全部(大学院を含む)に拡大)、②高校・高専への大学教育出張授業の助成事業、③高校・高専の教科で活用できる動画教材の制作を実施する。
  • 企業人材育成については、「鉄鋼工学セミナー」、「同専科」、「鉄鋼工学アドバンストセミナー」の実施・更なる充実を図る。
  • 西山記念技術講座・白石記念講座はニーズを踏まえたタイムリーな企画を進め、内容充実を図る。
  • 2022年度に開始した会員向けWeb講演会(鉄鋼協会Web講演会、Web講演会~鉄鋼技術最前線シリーズ~、Web講座~入門講座シリーズ~)の実施・更なる充実を図る。
  • JABEE(日本技術者教育認定機構)と連携し、高等教育機関等の教育プログラムの改善・向上に貢献する。

4.他学協会等との連携強化及び政府の科学技術・産業技術政策への対応

日本金属学会等の学術団体との協力を推進する。さらに日本鉄鋼連盟をはじめ、金属系材料研究開発センター、鉄鋼環境基金、鐵鋼スラグ協会、日本鋼構造協会、等の関係団体と研究助成、人材育成等の面での連携を継続・強化する。

5.内外への情報発信力の強化等

  • 2023年6月に第3回日独北欧合同シンポジウム(於:ドイツ)を開催する。更に、第16回日本中国鉄鋼学術会議2023年日本開催について準備を進める。
  • 会報誌「ふぇらむ」について、更なる内容充実を図るとともに、2023年1月に開始した一般公開を進める。
  • 2021年度より5年間の科研費交付を受けている「鉄鋼論文誌の国際競争力強化」の取組継続等により、欧文誌の更なる国際的プレゼンス向上を図る。
  • 協会に蓄積する各種研究・技術情報の電子化及び利用を更に推進する。