2022年度事業計画(2022.3.1~2023.2.28)

2022年度一般社団法人日本鉄鋼協会事業計画(2022.3.1~2023.2.28)

日本経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)による厳しい状況が続いている。新型株の発生もあり依然として予断を許さないが、感染抑制と社会・経済活動をバランスさせつつ、回復に向かうことが期待されている。海外経済は、持ち直していくことが期待されているが、感染の動向や供給面での制約、世界の脱炭素化への動きが加速し、脱炭素技術・資源への先行投資、化石燃料の新規開発停止等による、原料、エネルギー価格の高騰、いわゆるグリーンフレーション等が懸念されている。

我が国の粗鋼生産量は2021暦年では9,633万トン (前年比15.8%増)、世界粗鋼生産量は19億5,050万トン (前年比3.7%増)、上記の懸念等下振れリスクはあるが、回復していくことが期待されている。

技術・研究面においても鉄鋼新興国の追い上げは厳しさを増し、生産能力のみならず、品質面、技術面、研究面でも向上が著しい。「ISIJ Int.」の国別論文掲載数に関しては、発刊以来わが国が常に第1位であったが、2018年には中国が初めて第1位(126件)となった。しかしながら、2019年以降は、再び日本が第1位(19年134件、20年196件、21年177件)であり、世界のトップを自認する我が国としては今後とも産学官を挙げてその地位を維持・継続することが必要である。

本会が直面している課題として、①若手の鉄鋼研究者・技術者(若手会員数)の減少、②カーボンニュートラル等総合工学として取り組む必要のある喫緊の国家的・社会的課題への対応が挙げられる。こうした状況の中、産学が問題を共有し、鉄鋼に係る新技術開発、人材育成、イノベーションを可能とする社会システムの改革を促進するべく本会の活動を進める。

これらを踏まえ、2022年度の本会活動としては、以下の項目等の実施に重点をおいた事業活動を展開する。

具体的な施策

1.協会基本活動の再活性化及び個人会員数増加対策

  • 2021年度は感染症のため、2020年度に続き、学会部門、生産技術部門における各種大会、会議、セミナー等が中止または延期、オンライン開催となり、個人会員会費の減免を実施したものの、会員数の減少傾向を反転するには至らなかった。2022年度の最大の課題は会員数の回復であり、このため感染症対策を取りながら可能な限り協会活動をコロナ禍前の水準に回復させた上で、事業拡充に取り組む。新たな個人会員数増加対策として、若手会員会費優遇、会員限定無料Web講演会の実施、講演大会・セミナー等非会員参加者への会員資格付与、高校生・高専生対象事業などを実施する。
  • 感染症対策のため第183回春季講演大会は3月15-17日にオンライン開催とするが、第184回秋季講演大会は9月21-23日に福岡工業大学キャンパスにて開催する予定。

2.鉄鋼の学術・技術の活性化

  • 従来の研究助成制度(鉄鋼研究振興助成、研究会Ⅰ・Ⅱ、鉄鋼協会研究プロジェクト)に加え、新たに鉄鋼カーボンニュートラル研究助成を設立し、鉄鋼業における地球温暖化防止に係る先端的・萌芽的シーズ技術の掘り起こしを行い、カーボンニュートラルに資する基礎検討を推進する。
  • 学会部門と生産技術部門との連携強化をベースとして、新しい研究課題の発掘・発信を図る。
  • 学会部門ではフォーラム活動や研究会の充実、理学等も含めた新たな学術シーズの取り込みを進める。
  • 生産技術部門では分野別の技術部会活動を中心に、機動的、弾力的運営を行い、特に若手技術者・研究者の育成に重点を置いた活動を進めるとともに、関連境界領域での課題にも取り組む。

3.人材育成

  • 学生育成事業については、「修士学生向け鉄鋼工学概論セミナー」、「企業経営幹部による大学特別講義」等の実施・更なる充実を図るとともに、「学部学生向け最先端鉄鋼体験セミナー」等の再開を図る。また、新規に高校生・高専生対象事業を実施する。
  • 企業人材育成については、「鉄鋼工学セミナー専科」の実施・更なる充実を図るとともに、「鉄鋼工学セミナー」、「鉄鋼工学アドバンストセミナー」の再開・開催を図る。
  • 西山記念技術講座・白石記念講座はニーズを踏まえたタイムリーな企画を進め、内容充実を図る。
  • 新たに会員限定の企画として、鉄鋼に関連する産業・政策・技術等のトピックスに関する講演、鉄鋼技術の最前線に関する講演、鉄鋼の基礎技術講座をWebで実施する。
  • JABEE(日本技術者教育認定機構)と連携し、高等教育機関等の教育プログラムの改善・向上に貢献する。

4.他学協会等との連携強化

日本金属学会、日本熱処理技術協会等の学術団体との協力を推進する。さらに日本鉄鋼連盟をはじめ、金属系材料研究開発センター、鉄鋼環境基金、鐵鋼スラグ協会、日本鋼構造協会、等の関係団体と研究助成、人材育成等の面での連携を継続・強化する。

5.政府の科学技術・産業技術政策への対応

  • 地球温暖化対策、社会インフラ整備等の国家的・社会的課題について、技術面からの対応について検討を進める。
  • 本会からの情報提供によってNEDOが実施することとした2021年度先導研究「インフラの超高寿命化を実現する革新的材料・接合・寿命予測・予防保全技術の開発」に本会として引き続き協力・支援していく。

6.内外への情報発信力の強化等

  • 2022年5月に第7回先進鉄鋼材料国際会議(ICAS2022)をつくばで開催、10月に高温酸化・高温腐食国際シンポジウム(ISHOC-2022)を高松で開催、11月に第1回鉄鉱石塊成鉱に関するシンポジウム(SynOre2022)を松江で開催する。更に、第3回日独北欧合同シンポジウムの2022年ドイツ開催について準備を進める。
  • 2021年度より5年間の科研費交付を受けている「鉄鋼論文誌の国際競争力強化」の取組継続等により、論文誌の更なる国際的プレゼンス向上を図る。
  • 個人会員数増加対策の一つとして、会報誌「ふぇらむ」掲載記事の記事公開を、全個人会員を対象としたアンケートで会員の意向を確認した上で、実施する。
  • 協会に蓄積する各種研究・技術情報の電子化を更に推進する。