活躍する女性研究者・技術者-5 「私の会社生活」
武田 実佳子 Mikako Takeda (株)神戸製鋼所 材料研究所 表面制御研究室 主任研究員 私は現在、(株)神戸製鋼所に勤務し、神戸市西区にある技術開発本部 材料研究所に所属して研究開発に従事しています。 高校時代は理系クラスに所属、その後、大阪大学工学部、同大学院工学研究科修士課程(冶金工学専攻:当時)を修了後、神戸製鋼に入社したため、ずっと周 りはほとんど男性ばかりという環境でした。2人の子育てをしながら今日まで仕事を続けることができましたのも、会社の上司、同僚、また大学時代から現在に 至るまでお世話になっている大学の先生方からご支援いただいているおかげであり、大変感謝申し上げる次第です。 今回、「女性研究者・技術者シリーズへの記事を書かないか?」とのご依頼をいただきましたが、私自身は毎日ばたばたと時間に追われながら、周囲の方々に多大なご迷惑をおかけしつつやっておりますので、「仕事と子育ての両立」とは到底言えない状況です。しかしながら、このような人間が非常に数少ないながらも鉄鋼にいるということで安心していただくとともに、鉄鋼業に興味を持っていただけると幸いです。 大学時代は、自ら実験装置を作り、実験を行うことを通じて、材料に関わる研究の厳しさ・面白さを教えていただき、研究室でご指導頂いた3年間は現在の私の活動の原点となっています。また、就職活動の際には、男子学生の中に一人混じって鉄鋼を中心に工場見学をするうちに、ダイナミックな現場を見て、やっぱり材料、特に鉄に関わる仕事が出来ればと漠然と考えておりました。女性が極めて少ない職場であることは十分認識しながらも、企業に就職するならば鉄鋼業と決めていました。 入社以降、薄膜関係の研究開発など色々と携わって来ましたが、最近7年間は材料研究所の表面制御研究室にて、鉄鋼の熱間圧延プロセスで起こる高温酸化に関わる研究開発に従事しています。スケール組成の精密制御技術を確立させて、鉄鋼製品の表面品質を向上させることを目的としていおり、大変難しい仕事ではありますが、学生時代の工場見学で感じた鉄鋼の大きな魅力である壮大な製造現場での「ものづくり」の一端にたずさわることが出来るということで、やりがいもあり、楽しく取り組んでいます。研究開発を進める上では幾多の壁があり、失敗を山ほど重ねつつも、私の持ち前の「粘り強さ」で何とかやって来られたように思いますが、まだまだこの分野で勉強せねばならないことが山積み状態であり、企業研究者としてやっていけるよう日々努力したいと考えています。 一方で、私には、現在中学生の娘と小学生の息子がおり、2人それぞれ満1歳になるまで育児休業期間を頂いた後、元の部署に復職させていただきました。育児休業中は子育てに一応専念しましたが、寝不足気味の毎日のため、復帰後のことを十分に考える余裕はありませんでした。いざ復帰すると、自宅は職場から直近、また保育園、小学校と学童保育も自宅のすぐ前という恵まれた環境ではありましたが、お迎え、病気の対応などで毎日が綱渡り、会議や出張の日程調整でパニックに陥ることがたびたびありました。また、夜更かしする子供であったため、両親の方がダウン気味となることがありました。以降、現在に至るまで、出張や子供の病気のときは夫や双方の実家に手伝ってもらい、会議などで多少遅くなっても保育園で安心して見ていただくことが出来たので、何とか乗り切ってこられました。2人目となると慣れもあって、最初ほどの大変さは感じられず、2人一緒に大きくなってきたという感じです。私の会社生活のほとんどは子供たちとともにありますが、最近は娘も大きくなり、「お仕事しっかりやるように」、と怒られたり、励まされたりで、受験勉強しつつ弟の面倒も見てくれるなど、頼もしくなってきたなーと感慨深く感じる毎日です。 さて、これから進んで行かれる若い女性研究者・技術者の方々には、それぞれの事情や考え方もありますので、どのような道を選択するかはそれぞれと思いま す。私自身これで良かったかな?と常に迷いながらやってきており、今でも暗中模索の状態が続いています。仕事を続けたいと思われる場合には、それぞれの事情に合わせたペースがありますし、長い期間のうち子育てなどでの少々のペースダウンがあってもあまり思いつめずに、何とかなるさと楽しみながらやっていけば、必ず良い方向に導かれていくのではと考えています。 職場にて (2007年4月18日受付) 「ふぇらむvol.12 No.8掲載」 |