2027年春季(第193回)
第193回討論会テーマ
討論会の原稿枚数は、A4判4枚以内で作成願います。
ここにおける提案者は、講演大会において当該セッションの座長および副座長に指名されますので、ご了承ください。
- 1. 高温プロセス分野
「高水素高炉用焼結鉱の製造と特性評価」 - 提案者:林幸(科学大)
- 現在、全世界の鉄鋼業はカーボンニュートラル製鉄のプロセス開発に取り組んでいる。国内では、高炉内の水素濃度を高めることでCO2排出量を削減する研究開発が進められている。高H2・低コークス比操業においては炉内の通気性維持のため、焼結鉱の被還元性や耐還元粉化性の向上が求められる。鉄鉱石粒子同士を接着する結合相には、二次Hem、Magおよび多成分CFがあるが、二次Hemは被還元性に優れるが耐還元粉化性は劣り、Magは耐還元粉化性に優れるが被還元性は劣る。これに対し、多成分CFは還元粉化性・被還元性ともに優れ、高品質焼結鉱において重要な鉱物相である。2024年~2026年に行った研究会I「高水素高炉用焼結鉱の製造と特性評価」では、副原料であるMgOの添加が焼結鉱組織形成や焼結鉱の品質に及ぼす影響を調査し、高品質焼結鉱製造のためのMgO添加方法に関する研究を行った。その成果を各委員から報告いただくとともに、それに関連する研究成果報告も募集する。
- 2. 高温プロセス分野
「アークによるスクラップ伝熱・溶解機構研究会 最終報告「アークによるスクラップ伝熱・溶解機構」討論会」 - 提案者:植田滋(東北大)、中本将嗣(阪大)、藤井遥介(合同製鉄)
- 電気炉製鋼は、スクラップを主原料とする低炭素鉄鋼生産プロセスとして、カーボンニュートラル社会の実現に向けてその重要性が一層高まっている。一方、電気炉操業のさらなる高効率化には、スクラップの加熱・溶解挙動、アークからの伝熱および着熱効率、スラグフォーミング挙動を定量的に理解し、実操業へ反映することが重要である。「アークによるスクラップ伝熱・溶解機構」研究会では、電気炉部会のニーズに基づき、アークから金属への着熱挙動、スクラップの加熱・溶解挙動、ならびにスラグフォーミング機構について実験的な調査を進めてきた。その結果、これらの現象を支配する因子や相互関係について基礎的な知見が蓄積され、電気炉内の伝熱・溶解およびスラグフォーミング挙動を定量的に取り扱うモデル化への道筋が見えつつある。本討論会では、研究会活動の最終報告として各研究テーマで得られた成果を総括するとともに、それらの知見を電気炉操業の高効率化へどのように展開できるかを議論する。さらに、研究会活動を通じて明らかとなった未解決課題を整理し、今後必要となる基礎研究、モデル化および実炉への応用について、電気炉操業に携わる研究者・技術者と幅広く討論する。
- 3. サステナブルシステム分野
「鉄鋼業が向き合うべきサステナビリティ課題(研究会Ⅰ「鉄鋼に関わるサプライチェーンマネジメント」最終報告会)」 - 提案者:山末英嗣(立命館大)
- カーボンニュートラルは鉄鋼業にとって最重要課題の一つであるが、持続可能性を「炭素」だけで捉えることには限界がある。資源採掘に伴う生物多様性損失、鉱物資源制約、リン・窒素循環、さらには脱炭素化そのものが新たな資源需要や環境負荷を生む「資源パラドックス」など、課題は相互に連関している。本討論会では、プラネタリーバウンダリーの視点も踏まえ、鉄鋼業が今後向き合うべきサステナビリティ課題を俯瞰し、脱炭素の先にある研究・技術・産業の方向性を議論する。
- 4. 計測・制御・システム工学分野
「AI・CPSで拓く先進的鉄鋼プロセス制御」 - 提案者:蛯原義雄(京大/九大)、松下昌史(JFE)
- 近年、AI(人工知能)やサイバーフィジカルシステム(CPS)は、製造業における高度な自動化や省力化を実現する中核技術として注目を集めている。鉄鋼分野においても適用が進みつつある一方で、動的特性が複雑で高い信頼性が要求されるプロセス制御への適用は依然として限定的である。
本討論会では、新たに発足した研究会の活動の一環として、AIおよびCPSを活用した先進的な鉄鋼プロセス制御技術について幅広く議論する。特に、AIを用いた意思決定や制御において重要な課題となる信頼性・安定性評価に着目し、制御理論とAI技術の両面から今後の研究開発の方向性を探る。
また、鉄鋼プロセス制御への適用を念頭に、AI技術と従来の制御理論との比較・融合による高信頼・高効率な制御基盤の実現可能性について討論し、鉄鋼分野における次世代プロセス制御のあり方を展望する場としたい。
- 5. 計測・制御・システム工学分野
「研究会Ⅰ「エネルギーチェーンのシステミック最適化」最終報告会:研究成果と今後の展開」 - 提案者:諏訪晴彦(摂南大)、森純一(日本製鉄)
- 本研究会は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、エネルギー・物質・物流・エクセルギーフローを統合的に扱うことにより、鉄鋼生産システムのシステミック最適化を実現するための基盤技術・方法論の確立を目的として活動してきた。本年度は研究会の最終年度にあたり、本討論会では、エクセルギーフローネットワーク、製鉄所物流・エネルギーシミュレータ、確率モデルによる操業評価技術、生産計画・システミック最適化モデル等の研究成果について報告する。さらに、これらの成果について、モデル化手法の妥当性、評価結果の解釈、製鉄所への適用可能性および今後の研究展開を議論し、研究成果の実用的有効性を整理する。
- 6. 創形創質工学分野
「板成形プロセスのシミュレーション高精度化と可視化」 - 提案者:瀬川明夫(金沢工大)、柳田明(電機大)
- 板成形のシミュレーションや構成則のレビューおよび最新の材料特性の計測手法や変形状態の可視化技術を含めて総合的に討論する。
- 7. 創形創質工学分野
「熱間圧延ロールの課題の克服とロール界面現象の見える化(研究会Ⅰ「圧延ロール界面現象の見える化」最終報告会)」 - 提案者:柳田明(東京電機大)、上島伸文(阪大)
- 熱間圧延ロールの摩耗および表面損傷のメカニズムのみならず、圧延ロールバイト内のロール/被加工材現象を理解するためには、現象の見える化が必要である。「圧延ロール界面現象の見える化研究」では、直接的な計測のみならず、数値解析やモデル実験による物理シミュレーションを利用し研究を進めている。本討論会では2023年度より発足した当研究会の最終報告として、得られた成果と今後の課題を聴講者ともに議論する。
- 8. 材料の組織と特性分野
「水素脆化を再考する:格子欠陥と溶質原子の動的相互作用に起因する脆化と強化(研究会I「水素脆化の脆化現象としての一般性と特殊性」―「水素脆化の要因解明と評価・解析技術の進展」フォーラム合同討論会)」 - 提案者:松本龍介(阪大)、河盛誠(神鋼)、小山元道(東北大)
- 水素脆化は古くから研究されてきた重要な課題であるが、水素が塑性変形や破壊に及ぼす作用については、なお統一的な理解には至っていない。近年、水素と転位・粒界・空孔などの格子欠陥との相互作用を、水素の拡散や欠陥の運動を含む動的な過程として捉えることの重要性が改めて認識されている。一方、炭素や窒素など、拡散や格子欠陥の運動に伴って移動する溶質原子も、格子欠陥との相互作用を通じて、強化、塑性不安定性、局所変形、さらには脆化をもたらす。これらの現象を比較することは、水素脆化に固有の特徴と、溶質原子と格子欠陥の動的相互作用に起因する変形・破壊現象に共通する特徴を整理する上で有効である。本討論会では、実験、計算、理論および評価・解析技術に関する最新の知見を共有し、格子欠陥と溶質原子の動的相互作用という観点から、水素による強化・脆化機構とその一般性・特殊性について議論する。
- 9. 材料の組織と特性分野
「パーライト鋼および層状組織を有する材料に関する研究最前線」 - 提案者:岸田恭輔(京大)、上路林太郎(NIMS)、柴田曉伸(NIMS)
- パーライト鋼は伸線加工により実用鋼の中で最高峰の強度特性を発現し、さらなる高張力化、加工性の向上などが熱望されている。一方で、マイクロピラー圧縮試験など各種解析により、セメンタイトの塑性変形挙動など新知見が報告されている。本討論会では、2024年度から3年間にわたり実施した鉄鋼協会研究プロジェクト「伸線パーライト鋼の特異ラメラ組織発達機構」の成果に加えて、関連分野の公募発表も交えて議論を行い、パーライトの組織と力学特性に関する理解を深め、当該分野の今後の展望を考える。
- 10. 材料の組織と特性分野
「複合組織鋼の微視的・巨視的変形挙動」 - 提案者:北條智彦(東北学院大)
- 複合組織鋼は構成する硬質相と軟質相の強度、延性差、体積分率や形態を制御することによって優れた強度‐延性バランスを付与することが可能である。一方、複合組織鋼は硬質相と軟質相の強度、延性の差から微細組織レベルで不均一変形し、応力-ひずみ曲線に現れるようなマクロレベルの変形挙動においても、非常に複雑な不均一変形をしている。また、複合組織鋼は、硬質相と軟質相の不均一変形に起因して硬質相/軟質相界面での損傷(ボイド)の発生・成長が促進されるが、さまざまな相の組み合わせ、各相の強度や形態の制御ができるため、複合組織鋼の詳細な変形挙動やボイド発生/成長挙動は研究者間で統一的な認識はされていない。
本討論会では、複合組織鋼の微視的、巨視的な変形挙動、およびボイドの発生・成長挙動の議論を行い、複合組織鋼の変形・損傷挙動をマルチスケールに理解するための認識を共有する。
- 11. 評価・分析・解析分野
「鉄鋼材料評価・分析技術の最新動向-1」 - 提案者:大沼正人(北大)
- 通常は対象とする研究分野のセッションに分散しがちである鉄鋼材料の評価・解析・分析技術の利用研究について、その最新動向を評価分析技術に関わる研究者が広く共有する機会として討論会を定期的に開催することとし、その第1回目を開催する。
- 12. 評価・分析・解析分野
「鉄鋼スラグに含まれるMnの存在形態および挙動の解析と制御(研究会II「鉄鋼スラグ中Mnの存在形態解析」最終報告会)」 - 提案者:江場宏美(都市大)、當房博幸(JFE)
- マンガン(Mn)は、鋼の靭性を向上する特性があり、鉄鋼生産に欠かせない元素である。鉄鋼プロセスにおけるMnは、鉄鉱石に含まれるだけでなく、Mn合金鉄で添加される。Mnと酸素の親和性の高さから、一部はスラグへ取り込まれる。このためスラグの特性も左右されると考えられ、スラグ中の存在形態によってMnの活量、活性度なども変化することになる。しかしながらMnの形態や挙動については十分に分析や議論がなされてきたとは言い難い状況にあった。本研究会では鉄鋼スラグに含まれるMnの価数や含有鉱物相、Mnの溶出特性などを分析し、温度など鉄鋼スラグの生成条件との関係性について解析・議論を進めてきた。
本討論会では研究会における成果の最終報告を行い、研究の総括と研究成果の活用方法などについて討議を行う。今後の製鋼プロセス、操業変化に対応するためのさらなる研究の方向性・今後の展望に関する議論も含め、参加者との活発な意見交換ができれば幸いである。