第15回評価・分析・解析部会 部会集会・特別講演会
第170回秋季講演大会中(2015年9月16日(水)~18日(金)、於:九州大学・伊都キャンパス)に、評価・分析・解析部会の部会集会を開催します。お誘い合せの上、多数ご出席くださいますようご案内します。 なお、下記の通り、部会集会での特別講演会の開催をご案内いたします。多数の聴講をお待ちしております。 1. 日時:平成27年9月17日(木) 部会集会14:40~15:40 特別講演会14:45~15:35(質疑応答10分含む) 2. 場所:(一社)日本鉄鋼協会 第170回秋季講演大会 第7会場 (九州大学・伊都キャンパス 椎木講堂 第5講義室) 3. 特別講演会 1)講師:九州大学 水素材料先端科学研究センター 粟根 徹 特任准教授 2)演題:「局所領域の水素と微小介在物・析出物の高感度分析法」 3)概要: 鉄鋼材料中の水素、そして介在物・析出物は材料の強度等の機械的性質に大きな影響を及ぼすため、これらの分析の重要性、必要性は古くから認識されている。その一方で、数mass ppm以下のごく微小な量であっても水素脆化を引き起こす水素の局所分析、鉄鋼材料表面に観察される直径1 m以下の微小な介在物・析出物のいずれの場合も正確な分析が困難であることがよく知られている。これらの分析対象は、分析方法開発のための方向性が明確でなく、長年に亘り著しい閉塞感を醸し出していた。ところが近年、演者は局所領域中の水素、そして微小介在物・析出物の双方に対して独自の分析方法を開発し、その有効性を明確に示すことに成功している。 鉄鋼材料中の水素の局所分析に対しては、ダイナミック二次イオン質量分析(SIMS)法に独自の新方法を組み込むことにより、正確な分析を実現している[1]。SIMS法ではSIMS試料室真空中、試料表面などに存在する水(H2O)、炭化水素(CXHY)、有機物(CXHYOZ)など、分子中に水素原子を含む物質から発生するバックグラウンド水素が、試料に含まれる正味の水素の正確な分析を妨げる。独自の新方法とは、SIMS測定におけるバックグラウンド水素の低減と評価を主軸として、試料に含まれる正味の水素の局所分布を評価する方法である。 鉄鋼材料表面に観察される直径1 m以下の微小な介在物・析出物の分析に対しては、汎用型のエネルギー分散型X線分析装置付き走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)にごく簡単なセットアップを施すことにより実行可能な斜出射電子プローブマイクロアナリシス(EPMA)法により正確な分析を実現している[2]。「斜出射」という用語は電子線により励起されたX線を0°近傍の非常に小さな取出し角度で検出することを意味する。通常のSEM-EDX法(X線取出し角度: 30~40°)を用いる場合、介在物・析出物を透過した電子線により励起された母相構成元素の特性X線、並びに制動放射により発生した連続X線が介在物・析出物の構成元素の正確な分析を妨げる。一方、斜出射EPMA法では母相から発生したX線を除去し、介在物・析出物から発生したX線のみを分析することが可能となる。また、斜出射EPMA法の分析結果の正確性を証明することを目的として、鉄鋼材料表面部の比較的広い範囲に亘って分布する介在物・析出物を炭素膜上に抽出する独自の方法を開発している。この抽出法は簡便かつ実用性の高い方法であるので併せて解説する。 上記の研究を紹介することにより、鉄鋼材料の局所領域中の水素の分析、微小介在物・析出物の分析における閉塞感を打破し、より有効な分析方法開発への方向性を明確化することが本講演の目的である。 [参考文献] [1] Tohru Awane et al., Analytical Chemistry, Vol.83 (2011), pp. 2667-2676. [2] Tohru Awane et al., Analytical Chemistry, Vol.75 (2003), pp. 3831-3836. |